建設現場にて杭を打設する工法はさまざまな工法がありますが、ダウンザホールハンマーという工法をご存知でしょうか。杭打設の工法としては最も力強い掘削が可能な工法です。
今回はそんなダウンザホールハンマーのメリット・デメリットを解説いたします。
杭の打設が必要な理由は?
そもそも建設工事における杭はどのような役割を果たしているのでしょうか。
杭の役割としては「構造物の基礎杭(桟橋、建物など)」、「山留用の杭」、「仮設物の杭」などが挙げられます。
構造物の基礎や山留材は構造物や地山を支える重要な部分となります。
そのため、基礎杭を設計図通りに打設できなければ不安定な構造物となってしまいますので、設計にて算出した延長、強度を持った杭を打設する必要があります。
杭を建て込むための穴を掘削して、杭の打設まで行うことのできる工法がダウンザホールハンマー工法となります。
ダウンザホールハンマー工法の概要
ダウンザホールハンマー工法とは、スクリューの先端に取り付けられたダウンザホールハンマー(ビットとも呼ばれる)に、圧縮した高圧力の空気を送り込むことで、ハンマーをピストン運動させ打撃しながら地盤を掘削していく工法です。
その掘削能力は他の工法と比べても高い工法であり、土砂から岩、玉石など他の工法では掘削が難しいような硬質な地盤でも掘削が可能です。
そのため、建設現場では多くの場所でこのダウンザホールハンマー工法が使用されています。
ダウンザホールハンマー工法のメリット
ではダウンザホールハンマー工法のメリットについて解説します。
メリット1.砂質土~硬岩までの地盤を掘削可能
ダウンザホールハンマー工法は砂質土~硬岩まで掘削が可能ですが、工法の選定理由として挙げられる大きなメリットの一つが硬質な岩を掘削可能なことです。
現状、ダウンザホールハンマー工法より掘削能力が高い工法はないといえるほど掘削能力が高いです。
また、玉石まで掘削可能であるため、掘削できる地盤の適用範囲が広くさまざまな地盤環境に適した工法といえます。
さらには、掘削スピードも速いため、他工法との比較は必要ですが工期や工費を短縮することも可能です。
メリット2.構造がシンプルで手間がかからない
ダウンザホールハンマー工法に必要な機器は打撃を行うハンマーと空気を送るコンプレッサーといった少ない機械で掘削が可能です。
機械の分解、組立が容易で準備に手間がかからないというメリットがあります。
また、ハンマーの装着機械(ベースマシンともいいます)もクレーンやバックホウといった一般的な建設現場で用いる機械を使用可能なため、活用性が高いこともメリットだといえます。
メリット3.作業環境の悪い場所でも掘削が可能
ダウンザホールハンマー工法は小さなバックホウから大きなクレーンまで取り付ける機械の活用性が高いことから段差地、傾斜地といった施工環境の悪い場所でも施工が可能です。
また、水中施工も水を排出しながら掘削が可能なため、作業環境問わず施工が可能なことも大きなメリットです。
メリット4.エアーによる排土が可能
ダウンザホールハンマー工法はエアーにてピストン運動を発生すると説明しましたが、このエアーを用いて掘削した土を地上まで排出することができます。
ハンマーを打撃するほどの力なので細かい土であれば地上まで排土が可能なのです。
そのため、掘削した土をいちいちハンマーを抜いて排出するといった手間を省くことが可能なため作業効率がよいことがメリットとして挙げられます。
メリット5.杭を掘削と同時に打設できる
ダウンザホールハンマー工法の中には拡張するビットを使用することで掘削しながら杭打設を行うことができる種類の工法があります。
拡張したビットに鋼管を載せながら掘削し、所定の位置まで掘削が終わればビットを縮小することで鋼管をそのまま設置できるというわけです。
そのため、他工法のような掘削してからコンクリートなどの杭を打設するといった作業が必要なくなり、掘削効率を向上させて工期短縮を図ることができます。
ダウンザホールハンマー工法のデメリット
メリットがたくさんあるように感じるダウンザホールハンマー工法ですがデメリットも多数存在します。
デメリット1.騒音・振動が発生する
ダウンザホールハンマー工法はハンマーにて地盤を打撃する工法であることから、デメリットとして騒音・振動がどうしても発生してしまいます。
そのため、市街地など騒音・振動に関する影響が大きい地域では騒音・振動レベルなどの検討を行う必要があります。
ただし、対策として、フードを被せることによる騒音・振動の低減やハンマーに吸音材を取り付けるなどの工夫を行うことで多少は騒音・振動を減らすことが可能です。
デメリット2.粘土層など泥質な地盤を掘削する
ダウンザホールハンマー工法のメリット4.にてエアーによる排土が可能だと説明しましたが、泥質な地盤では掘削した土(泥)がエアーによる排出が行えないというデメリットがあります。
そのため、掘削のたびに排土作業が発生するため、粘土層の掘削では作業効率が悪くほかの工法を選定することが多いです。
デメリット3.施工費が高額
デメリット3つ目として施工費が高額だということが挙げられます。
ビットは超硬ビットと呼ばれるダイヤモンドビットを使用しており、高いビットでは1本で数百万以上の材料費がかかります。
さらにビットは消耗品ですので、掘削深度が深いほど、本数が多いほど施工費がかかるので他工法との経済比較などを行う必要があります。
デメリット4.大型コンプレッサーなど設置面積を確保する必要がある
ダウンザホールハンマー工法で使用するコンプレッサーは施工規模にもよりますが大型コンプレッサーを使用することが多いため、施工場所はある程度の面積を確保できる場所に限定されます。
また、杭となる鋼管も設置する杭が大きくなればなるほど、置き場の面積を必要とするので借地料が発生するなどのデメリットが挙げられます。
まとめ
ダウンザホールハンマー工法のメリット・デメリットをご説明いたしました。ご説明した通り、ダウンザホールハンマー工法は杭打設工法の中では他の工法で掘削不可能な硬質な地盤を掘削できるなどメリットを多い工法です。
ただし、杭打設工法はたくさんの工法が存在しており、ダウンザホールハンマー工法が苦手とする軟弱な粘土層を得意とする工法などもあります。
そのため、掘削場所の地盤環境、掘削期間、工費など総合的な判断で工法を選ぶ必要があります。気になった方は他の杭打設工法もご自分で調べてみると面白いかもしれません。