クレーン装置付トラックとは何でしょうか。
建設現場や物流業界では一般的に使用されていますが、どのような特徴があるのでしょうか。
ここではクレーン装置付トラックの特徴や使い方・注意点などを解説します。
クレーン装置付トラックとは?どんな種類がある?
クレーン装置付トラックは、トラックにクレーンが搭載されている車種で、業界では「ユニック」や「ユニック車」と呼ばれています。
クレーンを搭載しているトラックにはさまざまなサイズがあり、大型車から軽トラックまで存在しています。
魅力いっぱいのクレーン装置付トラックですが、その特徴などを順に見てみましょう。
クレーン装置付トラックの特徴
クレーン装置付トラックは非常に便利で、物流業界や建設業界で大活躍しています。
ラジコンによる遠隔操作もできるため、活躍の場はますます広がっています。
以下で、クレーン装置付トラックの特徴をそれぞれ詳細にご紹介します。
トラックとクレーンの二役が可能
クレーン装置付トラックの最も大きな特徴は、何といってもトラックとクレーンの二役がこなせることです。
このクレーンはおもに吊り上げ荷重5トン未満の重量物を積み下ろしすることに適しています。
操作はクレーンの根元に搭載されているレバーを使用するか、またはラジコンやリモコンで遠隔操作も可能です。
クレーン装置付トラックの多くはロングボディのため、重量のある長尺物を積載することが多く、クレーンが付いていると荷物を積み降ろしするときに非常に便利です。
通常のトラックは積み下ろしに他のクレーンや重機が必要ですが、クレーン装置付トラックは自力で積み下ろしができるため、時間に縛られません。
そのため運転手の勤務時間の短縮にもつながり、物流業界や建設業界の作業効率化に大きな貢献をしています。
クレーン装置付トラックの歴史
クレーン装置付トラックは通称「ユニック車」と呼ばれています。
1961年に初めてユニック車が作られたときは吊り上げ荷重は1トンでした。
1967年には全油圧式のクレーンを採用し、吊り上げ荷重は2トンに向上しました。
そして1976年には現在の形状に近いアウトリガー搭載の車種が登場し、吊り上げ荷重は2.5トンに向上しました。
その後さまざまな改良を重ね、リモコン式やラジコン式が開発され、現在の主流となっています。
2大メーカーが有名
クレーン装置付トラックの多くは2大メーカーにより展開されており、古河ユニックとタダノが大きなシェアを持っています。
それに次ぐ存在として新明和工業があり、電力会社などに多く採用されています。
クレーン装置付トラックは通称「ユニック車」と呼ばれていますが、これは古河ユニックの商品名が由来となっています。
タダノの車種は「カーゴクレーン」と呼ばれ、新明和工業の車種は「CBクレーン」と呼ばれています。
また、それぞれのメーカーにイメージカラーがあり、古河ユニックのクレーン装置付トラックはブームが赤、タダノは青、新明和工業は黄色と、一目で見分けがつきます。
クレーン装置付トラックの種類
クレーン装置付トラックはおもに3種類のタイプがあります。
最も一般的なのは運転席と荷台の間にクレーンが搭載されているタイプですが、荷台の中に搭載されていたり、荷台の後部に搭載されているタイプもあります。
以下で、クレーン装置付トラックの種類をそれぞれ詳細にご紹介します。
運転席と荷台との間にクレーンがある「クレーン付き」
運転席と荷台との間にクレーンがついているクレーン装置付トラックは、「クレーン付き」と呼ばれています。
クレーン装置付トラックの中では最も一般的なタイプで、現場では商品名に由来するユニック車という通称で呼ばれています。
一部例外もあり、ごくまれに荷台の後部にクレーンが付いている車種がありますが、これも分類上は「クレーン付き」となります。
荷台内部にクレーンがある「簡易クレーン」
荷台の内部にクレーンがついているタイプのクレーン装置付トラックは、「簡易クレーン」と呼ばれています。
「簡易クレーン」は他のクレーン装置付トラックに比べると小型が多く、ブームの段数も2段から3段までで、吊り上げ可能な荷重はおおむね3トン未満までです。
簡易クレーンは小型なため、市街地などの狭くて作業範囲が限られる場所でその能力を発揮します。
長いアウトリガーがついている「ハイジャッキ」
「ハイジャッキ」と呼ばれるタイプのクレーン装置付トラックは、長いアウトリガーによりトラックの車体が斜めに浮き上がることが特徴です。
これはアウトリガーにジャッキアップ機能がついているためにできることで、荷台に重機などを積載するときに効果を発揮します。
まれに大型車の中にはリアジャッキアップが可能な車種もあり、傾斜のある地面での作業の際に車体を安定させることができます。
クレーン装置付トラックの使い方
クレーン装置付トラックは非常に便利ですが、重量物を扱うため、正しい使い方をすることが重要です。
以下で、クレーン装置付トラックの使い方をそれぞれ詳細にご紹介します。
使用前の確認事項
クレーン装置付トラックでクレーン操作を開始する前には、いくつかの点を確認する必要があります。
定格荷重、作業半径、最大吊り上げ荷重、ブームの最大長さは必ず確認しましょう。
クレーンの操作方法
現在のクレーン装置付トラックに搭載されているクレーンは、ラジコンやリモコンで操作することが一般的です。
レバー操作で作業を行う場合は、レバーを優しく操作することが重要で、誤動作を防ぐことにもつながります。
クレーン作業を行うときは、まずブームの長さを適正な長さに伸ばし、ブームを立てた状態にして玉掛けを行います。
荷を吊り上げ移動するときは、フックを目線の高さに合わせて行うと見やすく、作業ミスを防ぐことにもつながります。
操作は必ず1つの動作ずつ丁寧に行い、無理な動きは決してしないようにしましょう。
慣れてくるとどうしても作業を早く済ませたいと思いがちですが、重量物を扱っていることを常に頭に置き、安全第一を忘れないことが重要です。
クレーン装置付トラックの注意点
クレーン装置付トラックは移動式クレーンの一種であるため、使用するには資格が必要です。
また、使用上の注意点や購入する際の注意点もあり、まとめてみました。
以下で、クレーン装置付トラックを扱ううえでの注意点をそれぞれ詳細にご紹介します。
使用するために必要な資格
クレーン装置付トラックは操作をするために講習の修了証や国家資格が必要で、所有していないと法令違反となります。
必要な資格はクレーンの吊り上げ荷重によって分けられています。
吊り上げ荷重が500kg以上1トン未満の場合は「運転のための特別教育」の修了証が必要です。
吊り上げ荷重が1トン以上5トン未満の場合は「小型移動式クレーン運転技能講習」の修了証が必要です。
吊り上げ荷重が5トン以上の場合は「移動式クレーン運転士免許」が必要です。
また、クレーン装置付トラックを公道で走行させるには、トラックのサイズに合った運転免許証が必要です。
クレーン装置付トラックを使用するときの注意点
クレーン装置付トラックを使用するとき、最も重要なことは玉掛けです。
玉掛けはクレーン操作の基本中の基本ですが、作業に慣れてくると侮ってしまいがちで、大きな事故のもとになります。
必ず玉掛け講習を受けた作業者が担当し、クレーン操作者も玉掛けが確実に行われていることを確認して作業しましょう。
クレーンの操作においての注意点は、ブームを無駄に伸ばしすぎないことです。
ブームを無駄に伸ばしすぎると不安定になり、バランスを崩して車体が転倒することにもつながります。
また、比較的多いのはアウトリガーを最大まで伸ばさずに使用して不安定になることで、これも車体の転倒につながる可能性があるので注意が必要です。
クレーン装置付トラックを購入するときの注意点
クレーン装置付トラックを購入するときは、用途に合った車種を選ぶことが重要です。
吊り上げる物の重量がどのくらいなのかによって選ぶ車種が決まってきますが、吊り上げる物の重量が重くなるほどトラックの車体重量も重い車種を選ぶ必要があります。
また、作業半径や高さも考慮に入れておく必要があり、それによって必要なブームの段数も違ってくるので、搭載されているブームの段数と最大長さをよく事前調査しましょう。
重量の重い物を扱う場合はアウトリガーも必要になるので、搭載されているかどうかもチェックする必要があります。
また、ラジコン操作が可能かどうかも購入時に確認し、ラジコン操作を特に必要としない場合はあえて搭載されていない車種を選ぶことでコストカットも可能です。
まとめ
クレーン装置付トラックにはさまざまなタイプがありますが、広く使用されているのは運転席と荷台の間にクレーンが搭載されている「クレーン付き」と呼ばれる車種です。
一方で、荷台の中にクレーンを搭載している「簡易クレーン」も、都心部などの狭い場所で活躍しています。
クレーン装置付トラックは物流業界や建設業界の発展に大きく貢献しており、今後もますます活躍していくことでしょう。