油圧ハンマは、基礎工事の際に杭を打ち付ける「打込み杭工法」(打撃工法ともいう)の際に用いられる建設機械。杭打ちの際、多くの現場で活躍しています。
この記事では、油圧ハンマの特徴や使い方、使用時の注意点を解説します。
杭打ちの工法について調べている方や、今後油圧ハンマを使用する方のお役に立てば幸いです。
1 油圧ハンマの特徴
油圧ハンマは、油圧の力で地中に杭を打ち込む機械です。現場では「三点式杭打機」などの重機に取り付けて使用します。
油圧ハンマにセットされている「ラム」と呼ばれる重りを、油圧の力で振り上げて杭の上に振り下ろしていきます。
これは「油圧ハンマ―打撃工法」と呼ばれ、多くの現場で取り入れられています。
油圧ハンマが主流になる前は、ディーゼルエンジンの力で杭を打ち込む「ディーゼルハンマ」が主に使われていました。
しかしディーゼルハンマは騒音や振動がかなり大きい上、ディーゼルガソリンを燃やした際の排気ガスが大量に出るという欠点がありました。
この点、油圧ハンマは騒音も静かで、排ガスも出ません。油圧ハンマはディーゼルハンマの持つ力強さを活かすとともに、欠点を少なくできる優れたハンマと言えます。
2 油圧ハンマの使い方
油圧ハンマは多くの場合、杭打機に取り付けて使用します。杭打機の操縦には免許が必要なため、自分の持っている免許が適合しているかどうかチェックする必要があります。
杭を打ち込む際には、硬い地盤に確実に杭を到達させる必要があります。どの深さまで杭を打ち込めばいいのかは、事前に調査できます。
ボーリング調査によって算出できますが、一般住宅等の場合はより簡単で安価な「スウェーデン式サウンディング試験」によって調査することもできます。
油圧ハンマで杭を打ち込む際の1打撃あたりの「貫入量」や「リバウンド量」をもとに、杭の支持力を計算することもできます。
3 油圧ハンマを使用する際の注意点
3-1 騒音・振動に注意
エンジンの力で杭を打ち込む「ディーゼルハンマ」を使用していた時代には、杭打ちの際に発生する騒音・振動がかなり発生していました。
油圧ハンマが用いられるようになってから、騒音・振動は低減されました。それでも、数トンもの重りを杭にぶつけて地中に打ち込むわけですから、騒音・振動は発生します。
油圧ハンマを使用した杭打ちの際には、近隣住民への周知等、騒音・振動対策が必須となります。
また、油圧ハンマの中には防音装置を取り付けられるものがあります。騒音・振動を低減するため、こういった部品を活用することもできます。
それでも対策が難しければ、他の工法を採用する必要があるかもしれません。地面を掘削してから杭を埋め込んでいく「埋込み工法」など、騒音や振動をかなり抑えた工法も存在します。
3-2 バランスを崩した転倒事故にも注意
油圧ハンマを取り付けた杭打機は、全長が数十メートルに及ぶ場合もあります。杭打機はかなり縦長のシルエットとなり、ぐらついて転倒しやすいというリスクがあります。
実際、杭打機の転倒によって他の建物を破壊したり、死者が出ている事故も報告されています。
杭打機の固定は、安全基準に沿って確実に行われている必要があります。何度も慎重にチェックすることが必要です。
また、杭打機を固定する地盤が緩い場合もあります。その場合には、凝固剤などを用いて地面を固めた上で杭打機を設置することもできます。
4 まとめ
油圧ハンマは、油圧の力で重りを振り上げ、杭を打ち付けるための機械です。以前よく使われていた「ディーゼルハンマ」より振動や騒音が少なく、排ガスも発生しなくなりました。
騒音や振動が少なくなったとはいえ、ゼロにすることはできません。周辺住民への周知や、防音装置等を使用する必要があるかもしれません。
また、杭打機は縦長のシルエットゆえに転倒リスクも高い機械です。転倒することがないように、確実に安全基準に沿った固定がなされる必要があります。