バケットホイールエクスカベーターって何?特徴と使い方・注意点を解説

バケットホイールエクスカベーター

バケットホイールエクスカベーターという建設機械があります。

多くの人は見たことがないと思いますが、非常にインパクトのある建設機械です。

ここではそんなバケットホイールエクスカベーターの特徴と使い方・注意点を解説します。

とにかく巨大!ギネスにも認定されているバケットホイールエクスカベーター

バケットホイールエクスカベーターは、おもに露天掘りの鉱山で採掘を行う建設機械です。

露天掘りとは、鉱山で鉱石を採掘する手法の一つで、細い坑道を掘らずに地上の広範囲を渦巻き状に採掘する方法です。

海外の露天掘り鉱山は非常に大規模なので、その規模に合わせて採掘用に導入されたのが、バケットホイールエクスカベーターです。

その姿はとてつもなく巨大で、人類が生み出した自走できる建設機械としては史上最大の大きさを誇り、ギネス記録としても認定されています。

日本でもバケットホイールエクスカベーターの一種が、鉱山・港・製鉄所・発電所などで活躍しています。

バケットホイールエクスカベーターの特徴と使い方・注意点を見てみましょう。

バケットホイールエクスカベーターの特徴

バケットホイールエクスカベーターは、その頭文字を取って略称を「BWE」とも呼ばれています。

特に、旧東ドイツの人民公社が前身のタクラフ社が製造した「Bagger 293」は、世界最大のバケットホイールエクスカベーターと言われています。

「Bagger 293」は、ドイツで石炭の採掘に使用されており、その巨大さだけではなく、驚くべき機能をたくさん持っているのです。

ここでは「Bagger 293」を中心に、バケットホイールエクスカベーターの特徴をそれぞれ詳細にご紹介します。

とにかく巨大

バケットホイールエクスカベーターの最大の特徴は、何といってもその巨大さです。

機体の大きさがギネス記録に認定されている「Bagger 293」は、全長が225mで高さ96m、総重量は14,200トンという桁外れのサイズを持っています。

機体の中心部から、鉄骨がむき出しになった複数のアームが伸びており、そのアームを支えるブームが高々とそびえ立っています。

その姿は建設機械というよりは、まるで一つの工場のようにも見えます。

複雑に入り組んだ構造

バケットホイールエクスカベーターは、その巨大な機体の中にいくつかの作業が行える仕組みを備えています。

いくつかの作業とは、おもに岩石の粉砕・鉱石の掘削・鉱石の搬送・保管場所への堆積などです。

それに加えて、自走するための走行機能や、電力を受電するための設備、運転席などが複雑に入り組んだ構造をしています。

ほぼ1世紀にわたって製造されている

バケットホイールエクスカベーターは、1920年代にドイツなどで複数のメーカーが製造を開始して以来、約1世紀にわたって製造が行われています。

基本的なメカニズムは製造開始時からそれほど変化していませんが、1970年代あたりから急激に機体の大型化が始まり、現在のような巨大な機体へと進化してきました。

1台を完成させるために数年が必要

バケットホイールエクスカベーター「Bagger 293」は、1995年にタクラフ社によって製造されましたが、完成するまでに5年もの月日を要しています。

また、総工費も桁外れで、100億円以上かかったとも言われています。

自走できる

バケットホイールエクスカベーターは、想像を絶する大きさを持った機械でありながら、自力で走行することができます。

自走できる車両としては、これまで世の中に存在したどの車両よりも大きいのです。

あまりに巨大なために、移動速度は最大でも分速10mと、人が歩く速度よりもずっと遅いのですが、総重量14,200トンの建設機械が移動できること自体が驚異的です。

12本ものキャタピラを装備していることからも分かるように、走行部分も桁違いの大きさを誇っています。

巨大な回転式のバケット付きホイールを装備

バケットホイールエクスカベーターは、採掘用のバケットを装着したホイール(回転体)を持つエクスカベーター(掘削機)の名のとおり、鉱山での採掘をおもな役割としています。

最大級のバケットホイールエクスカベーター「Bagger 293」に装備されているホイールは、直径が20m以上あり、18個のバケットを装着した姿はまるで巨大な鋸のようです。

1つのバケットの容量が6.6㎥あり、その採掘用バケット付きホイールによって、一日に24万トンというとてつもない量の鉱石を採掘することができます。

電力によって稼働

バケットホイールエクスカベーターは、その巨大な機体を電力によって走行させています。

その桁違いに巨大な機体を稼働させるためには、必要な電力も桁違いで、定常運転時には16MW(16000kW)もの電力を消費します。

日本では工場でさえも2000kWを超えれば大規模なほうなので、いかにバケットホイールエクスカベーターの電力需要の大きさが規格外であることが分かります。

過酷な寒冷地での作業が可能

バケットホイールエクスカベーターは、氷点下45℃もの過酷な寒冷地でも作業できるように設計されています。

メカニズムが寒冷地仕様になっているのはもちろん、電力で稼働する建設機械なので、電線の氷雪害対策も万全に行われています。

5人の作業員で操縦する

バケットホイールエクスカベーター「Bagger 293」は、あまりに巨大なために1人で操作することはできず、5人の作業員によって操縦されています。

また、走行するためのキャタピラが巨大なため、運転席はかなり高い位置にあります。

将来的には操作の自動化を目指して研究が進められており、この巨大な建設機械が1人で操作できたり、無人運転できる時代が来るかもしれません。

生活するための設備が用意されている

バケットホイールエクスカベーター「Bagger 293」は5人で操縦するということもあって、運転席以外にもトイレ・風呂・キッチンまでも設置されています。

24時間稼働することもできるように、人員体制だけではなく設備のほうも万全となっています。

ドイツには実物が展示されている

バケットホイールエクスカベーターが稼働しているのはおもに鉱山なので、基本的に関係者以外は立ち入ることができず、その姿を目撃することができません。

また、日本国内には「Bagger 293」のような最大級のバケットホイールエクスカベーターは存在していないので、実物を見るためには海外に行く必要があります。

ありがたいことに、ドイツ東部にあるフェロポリスという屋外博物館には、実物のバケットホイールエクスカベーターが5台も展示されているのです。

その巨大な姿を間近に見ることができるだけではなく、内部も見学することができるので、多くの観光客の人気スポットになっています。

国内ではおもに2社が製造

バケットホイールエクスカベーターは、日本国内では川崎重工系列のカワサキプラントシステムズと、三井三池製作所が製造しています。

国内産のバケットホイールエクスカベーターは、スタッカリクレーマーと呼ばれており、積み付け(スタッカ)と払い出し(リクレーマ)の作業を行っています。

バケットホイールエクスカベーターの使い方

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バケットホイールエクスカベーターは、おもに鉱石の採掘に使用されていますが、国内ではやや小型の機種が採掘以外のさまざまな役割も担っています。

バケットホイールエクスカベーターの使い方を、それぞれ詳細にご紹介します。

露天掘りの鉱山で採掘を行う

バケットホイールエクスカベーターの最も代表的な使用方法は、露天掘りの鉱山における採掘作業です。

この巨大な機体のおかげで、海外の大規模な鉱山では毎日大量の鉱石を産出しており、企業のみならず国家の経済を支える大黒柱となっているのです。

貿易船から港に搬入された鉱石などの運搬を行う

もし国内でバケットホイールエクスカベーターを目撃することがあるとすれば、最も可能性が高いのは港ではないでしょうか。

国際貿易港には海外から鉄鉱石などのたくさんの資源が輸入されており、貿易船から搬入した資源を一旦蓄えておく場所があります。

国内で使用されているバケットホイールエクスカベーターは、海外で使用されているものよりは小型です。

製鉄所などの工場で資材の運搬などを行う

バケットホイールエクスカベーターは、大量の鉄鉱石・コークス・石灰石などを使用する製鉄所でも使用されています。

製鉄所のオープンヤードに配置されたバケットホイールエクスカベーターが、山積みになった鉱石類を運搬するなどの役目を果たしています。

製鉄所以外では、宇部興産のセメント工場で使用されているバケットホイールエクスカベーターが有名です。

石炭火力発電所で燃料の供給などを行う

バケットホイールエクスカベーターは、石炭火力発電所において石炭の供給にも使用されています。

火力発電所はベース電源と呼ばれ、24時間稼働し続けているので、燃料となる石炭を絶え間なく発電用ボイラーに供給しなくてはなりません。

オープンヤードにストックされた石炭を供給し続けるには、バケットホイールエクスカベーターが欠かせないのです。

バケットホイールエクスカベーターの注意点

バケットホイールエクスカベーターは超大型なので、使用するためには非常に広いスペースを必要とします。

価格も非常に高価なので、導入を検討する際には費用対効果を十分に分析する必要があるでしょう。

また、バケットホイールエクスカベーターを運転する仕事に就きたい人は、バケットホイールエクスカベーターが使用されている工場に就職しなければなりません。

求人件数は多くはありませんが、バケットホイールエクスカベーター(国内ではスタッカリクレーマー)の作業員を募集していることがあります。

運転するときには、安全に十分注意して作業に臨みましょう。

まとめ

ギネス記録にまで登録されている巨大なバケットホイールエクスカベーターは、一度は実物を見てみたいと思わせる魅力があります。

国内のバケットホイールエクスカベーターも、大規模な産業施設の中で大いに活躍しています。

この記事をきっかけにバケットホイールエクスカベーターに興味を持っていただければ幸いです。

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