ダンプトラックは最も日常的に見かける機会の多い大型車両の一つでしょう。
特に建設業では、あらゆる現場を支える縁の下の力持ち的な存在です。
ここではそんなダンプトラックの特徴と使い方・注意点を解説します。
誰もが知っているダンプトラックにはこんな特徴と使い方・注意点があった
ダンプトラックとは、貨物を輸送することを役目とするトラックの一種で、土砂や砕石、産業廃棄物などを運搬することに使用されています。
「ダンプトラック」は英語で、日本では「ダンプカー」と呼ばれたり、単に「ダンプ」とも呼ばれています。
「ダンプ」とは、どさっと下ろすという意味の英語「dump」のことで、荷台を持ち上げて傾け、積み荷の土砂を重力によって下ろす様子から来ています。
巨大な車体を持ち、轟音をたてて走る姿は迫力満点で、建設現場の一つの象徴的な車両でもあります。
一度に多くの土砂を運搬することができるダンプトラックは大規模な建設工事には不可欠で、日本の国土開発や都市開発に大きな貢献をしているのです。
そんな誰もが知っているダンプトラックですが、実際に乗って運転するのは容易ではなく、ダンプトラックに対する深い理解と知識が必要になります。
ここからはダンプトラックの特徴と使い方・注意点を順に見てみましょう。
ダンプトラックの特徴を解説
ダンプトラックは日常的に目撃する車両なので、比較的身近な車両に思われますが、知っているようで意外と知らないこともあります。
ダンプにはさまざまなサイズがあり、最も小さいものは軽トラックから、最も大きいものは公道では見ることができない巨大なサイズの車両もあります。
ダンプトラックの特徴をそれぞれ詳細にご紹介しましょう。
油圧シリンダーの伸長によって荷台を持ち上げる
ダンプトラックは、荷台を油圧シリンダーの伸長によって持ち上げ傾けることにより、土砂などの積み荷を重力で下ろすことができます。
荷物を積む箱状の部分のことを「ベッセル」と呼び、積み荷を囲む側面のことは「ゲート」や「あおり」と呼ばれています。
荷台の動きにはさまざまなタイプがある
ダンプトラックの多くは荷台を後方に傾けて積み荷を下ろしますが、このタイプをリヤダンプと呼びます。
他にも荷台を左右に傾けて積み荷を下ろすタイプのサイドダンプや、切り替えによって後方にも左右にも荷台を傾けることができる三転ダンプもあります。
サイドダンプや三転ダンプは、車体を旋回する場所がない狭いスペースでの荷下ろしのときに重宝します。
特殊なダンプトラックとして、荷台を後方にスライドさせることができるモデルもあり、建設機械などを積載することもできます。
さらに、荷台を傾けるだけではなく高く持ち上げることができるリフトダンプもあり、ダンプトラックでありながら高所作業などに使用することができます。
トレーラータイプのダンプも存在する
ダンプトラックにはトレーラータイプのモデルも存在し、これらは1999年の規制緩和により導入された新しいタイプのダンプトラックです。
一般的なダンプトラックよりも大型の荷台があり、けん引車によってけん引することにより走行することができます。
荷台が2つ搭載されているフルトレーラータイプのダンプトラックは、最大で26トンまでの土砂を積載することができます。
これらのトレーラータイプのダンプトラックを運転するためには、大型自動車免許の他に、けん引免許が必要です。
軽トラックのダンプも存在する
ダンプトラックにはさまざまなサイズがあり、最も小型のダンプトラックは最大積載量350kgの軽トラックです。
おもに農業用として活躍しており、資材や収穫物の運搬から、雑草や間伐材のようなかさばる重量物も効率良く積み下ろしをすることができ、重宝されています。
土砂の運搬が可能なモデルも販売されており、「あおり」の深さやダンプ機構の違いなど、さまざまな種類のモデルの中から選ぶことができます。
公道を走れない巨大なサイズのダンプも
ダンプトラックには、あまりに巨大すぎて公道を走行できないものも存在しています。
そのような巨大なサイズのダンプトラックは「重ダンプトラック」や「オフロードダンプトラック」「マンモスダンプ」とも呼ばれています。
海外では「ホウルトラック」や「ダンパー」などと呼ばれ、一般のダンプトラックとは明確に区別されていて、関係者たちの間では全く別物という認識のようです。
おもにダム工事の土砂運搬や鉱山の露天掘りにおける鉱石運搬などに使用され、ホイールベースが非常に短く、タイヤが巨大なことが特徴です。
公道を走行できないうえに、他の車体に積載して運搬することもできないため、部品の状態で運搬し、現地で組み立てて使用されています。
世界で最も巨大なダンプトラックはベラルーシで製造されたもので、積載重量が425トンにも達します。
日本の重ダンプトラックメーカーの中では小松製作所が特に有名で、最大のモデルは積載重量が362トンに達し、アメリカを始め海外でも広く使用されています。
ダンプトラックの使い方を解説
ダンプトラックにはさまざまな種類があることが分かりましたが、どのような使われ方をしているのでしょうか。
最もよく目にするのは土砂の運搬をするダンプトラックですが、それ以外にもさまざまな使われ方がされています。
ダンプトラックの使い方をそれぞれ詳細にご紹介します。
土砂の運搬
ダンプトラックは一般的に、建設業やそれに付随する業種で使用される土砂の運搬の役目を担っています。
建物や道路の基礎部分に敷き詰める砂利や、コンクリートの骨材となる砂利を運搬したり、地山の掘削によって生じた土砂の運搬が最もよく行われる作業です。
港の埋め立て地のように大量の土砂が必要になる場合には、大型のダンプトラックが頻繁に往来します。
また、山深い地方でのダムの建設や、鉱山の露天掘りなどでは、公道を走ることがない超大型のダンプトラックが活躍しています。
中型や小型のダンプトラック
中型のダンプトラックは、おもに中小企業の建設会社などでよく使用されています。
頻繁に土砂を運搬するというよりは、必要に応じて出動するというスタイルが多いようです。
小型の重機を運搬するために使用されることもあります。
また、2トン程度の小型のダンプトラックや、軽トラックのダンプは、農業でもよく使用されます。
土砂に限らず、資材や作物、除去した雑草や間伐材など、比較的軽量な荷物も運んでいます。
産業廃棄物の運搬
ダンプトラックは産業廃棄物の運搬にも使用されます。
解体業者が解体したビルのコンクリートのがれきや、ガラスくず、陶磁器くず、汚泥などが産業廃棄物の中でも土砂と同じ分類に該当します。
土砂以外の荷物を運搬するダンプトラック
公道を走行中に、荷台に「土砂等運搬禁止車両」と書かれたダンプトラックを目撃したことがあるかもしれません。
それらは一般的に「土砂禁ダンプトラック」や「深ダンプトラック」と呼ばれています。
土砂禁ダンプトラックには、ペットボトルや落ち葉、木材チップなどの軽量でかさばる荷物が積み込まれることが多く、風で積み荷が飛ばないように「あおり」が高くなっています。
「あおり」が高いために、土砂を積んだ場合はたくさん積むことができてしまうため、過積載になってしまうので、始めから土砂の積載を禁止しているのです。
土砂禁ダンプトラックは、車体の一部に「土砂を運搬しないという明確な表示」をすることが義務付けられています。
もしも土砂禁ダンプトラックで土砂を運搬した場合は、過積載となり罰せられます。
ダンプトラックの注意点を解説
ダンプトラックは大量の荷物を運搬できるメリットがありますが、重量物を運ぶには危険も伴うため、運転には専門的な知識と技術が必要です。
また、守らなけらばならない法規や、運転に必要な資格もあり、違反をすると厳しい罰則が適用されます。
ダンプトラックの注意点をそれぞれ詳細にご紹介しましょう。
大型自動車免許が必要
ダンプトラックにはさまざまなサイズがありますが、土砂などの運搬に使用されるのはおもに10トン以上の大型のダンプトラックです。
大型のダンプトラックを運転するためには大型自動車免許を取得しなければなりません。
現在、大型自動車免許を取得するためには、21歳以上であり普通自動車免許の保有が3年以上でなければならないという規定があります。
しかし近年の少子化の影響で大型車のドライバー不足が深刻となり、全日本トラック協会からの要望もあって、この規定が2020年に改正されました。
新しい規定は、普通自動車免許を取得して1年以上経過し、特定の教習を修了した場合のみ、最短19歳で大型自動車免許を取得できることになったというものです。
最大積載量が6.5トン未満のダンプトラックならば中型自動車免許で運転することができますが、こちらも同様に規定の改正が行われました。
この規定は2022年の春頃に施行される予定です。
運転中の視界が乗用車とは異なる
ダンプトラックは運転席の位置が乗用車よりもはるかに高いので、前方の周囲は見渡しやすくなっています。
その反面、乗用車では普通に見ることができる位置が見づらかったり、死角になって見えないということがあります。
特に左側の後方はサイドミラーによって確認するしか方法がなく、常にミラーを確認しながら意識を置いておき、状況を把握しながら運転する必要があります。
内輪差に注意
特にダンプトラックを運転するときに注意すべき点は、旋回するときの内輪差です。
右折・左折するときに、乗用車のような感覚でショートカットすると、確実に後輪が前輪の通過した位置よりも内側を通過するので危険です。
特に左側は歩行者や自転車などがいた場合に巻き込んでしまう危険性があるので、内輪差を常に頭に入れて運転することを心がけましょう。
過積載に注意
ダンプトラックに限ったことではありませんが、トラックは過積載をしてはならないことが道路交通法に明記されており、厳しく取り締まりが行われています。
過積載をすると、自身に車体横転の危険性があるだけでなく、道路や橋などを損傷させたり、そのことが原因で大きな事故を引き起こす危険性があります。
周囲のドライバーや近隣住民にも多大な迷惑をかける可能性があるので、絶対に行わないようにしましょう。
また、「土砂禁ダンプトラック」で土砂を積載した場合は過積載となる危険性が高いので、違反をすると厳しい罰則が適用されるので注意が必要です。
過積載をすると、ドライバーだけではなく運送会社にも責任が追及され、過積載をするように指示をしたことが判明すると、重い罰則が科せられます。
まとめ
ダンプトラックには積み荷を自力で下ろすことができるという特徴があり、土砂の運搬以外にもさまざまな使い方があることが分かりました。
また、運転には資格が必要なことや、過積載をしてはならないなどの注意点があり、運転者は規則を守って正しく活用する責任があります。
国家の基盤である建設業には欠かせないダンプトラックは、これからも日本全国で活躍していくことでしょう。