皆さん、アースオーガという名前をきいたことがあるでしょうか。
建設業や農業に携わっていなければあまり耳にすることのない機械だと思います。
その中でも今回は、アースオーガ中掘り機とその他アースオーガ機の違いについて、解説していきたいと思います。
アースオーガとは
アースオーガとは簡単にいうと「穴掘り機」のことです。
ドリル(スクリュー)状になっている先端を回転させることで穴を掘っていく機械の総称なのですが、アースオーガには人の手で使用できるような小さい機械から、工事現場で使われるようなクレーンに取り付けるタイプの大きい機械まで様々なものがあります。
今回ご説明するアースオーガ中掘り機はクレーンに取り付けるタイプの一部を指します。
プレボーリング工法(その他アースオーガ機を用いた工法)について
まずはアースオーガ中掘り機を説明する前に、建設現場で掘削を行うための工法であるプレボーリング工法について説明していきます。
プレボーリング工法とはアースオーガ機を用いた工法の一種であり、大きい深い穴を掘って構造物を構築する杭基礎や桟橋などを施工するために使用します。
まず、先端に取り付けたスクリューを用いて、地盤を所定の深さ、大きさまで掘削します。掘削後、掘削した穴に基礎となるコンクリートや鋼の杭を打ち込んで施工完了です。
アースオーガ中掘り機について
ではアースオーガ中掘り機で掘削する場合、プレボーリング工法と何が違うのでしょうか。
最も違う点は名前の通り、「杭の中を掘削する」工法だということです。先ほどのプレボーリング工法は掘削してから杭を打ち込む工法でした。
しかし、アースオーガ中掘り機では掘削と杭の打ち込みを同時に行うことが可能なのです。具体的に説明すると、杭の中に挿入したスクリューにて地面を掘削していきます。
掘削した土は杭の中の空間を通して排出することで掘り進めることが可能です。掘削する際は杭の自重もしくは重りを用いて杭を打撃するなどして、少しずつ掘削していきます。
所定の深さまで掘削が完了したら、支持層となる先端部分に根固めとなるモルタル等を打設して施工完了となります。
プレボーリング工法のメリット、デメリット
メリット
- 硬い地盤でも掘削可能
プレボーリング工法では、先端のスクリューにハンマーによる打撃の力を伝えて掘削するので硬い地盤でも掘削が可能です。
- 施工性がよく、一般的に使われる工法
国交省に規定されている一般的な工法であり、使用機械も少ないことから経済性もよいです。
また、打撃による貫入量から地盤の硬さも判断しやすく、信頼性が高い工法です。
デメリット
- 騒音、振動が発生する
打撃を行って掘削することから、どうしても騒音、振動が発生してしまいます。
掘削する際には周辺の環境条件など留意する必要があります。
- 杭の建込みを精度よく行う必要がある
掘削を行った後に杭を建込むことから、建込みを精度よく慎重に行わなければなりません。
また、建込みを行うために余分な土の掘削を行う必要もあります。
アースオーガ中掘り工法のメリット、デメリット
メリット
- 掘削と杭の建込みを同時にできる
打設する杭を掘削と同時に施工できるため、施工性がよいです。
地盤など施工条件にもよりますが施工速度を向上させることも可能です。
また、プレボーリング工法と違い、ケーシングと呼ばれる孔壁保護を行う必要もありません。
- 騒音、振動が少ない
アースオーガ中掘り工法はプレボーリング工法と違い、打撃のみで掘削するのではなく圧入と少しの打撃で掘削が可能なため、騒音、振動が少ない工法となっています。
- 施工管理が容易
杭の建込みを掘削と同時に行うことから、無駄な掘削が少なく杭の建込み精度も比較的容易に確保可能です。
デメリット
- 硬い地盤には適さない
圧入にて掘削を行うことから、硬い地盤では掘削を進めることができない可能性があります。
N値(地盤の硬さの指標)が低い地盤のみ適した工法となります。
- 地盤によっては施工日数がかかる
デメリット①で説明したように、想定していた地盤より硬い地盤などが出てくると施工速度が落ちてしまい、施工日数がかかってしまうこともあります。
事前の調査にてアースオーガ中掘り工法で行うのか、プレボーリング工法で行うのか検討して掘削を計画する必要があります。
まとめ
アースオーガ中掘り機の特徴やメリット・デメリットについてお分かりいただけたでしょうか。他のアースオーガと違う点は中の空いた管を用いて、掘削しながら杭の打設までできる優れた工法だということです。
施工する現地状況にもよりますが、軟らかい地盤ではアースオーガ中掘り機を用いた掘削が適しているといえます。
アースオーガ中掘り機を普段の生活で見かける機会は少ないと思いますが、構造物の施工に欠かせない工法だということを覚えていただけると嬉しいです。