汚泥吸排車には、どのようなメリットとデメリットがあるのでしょうか。
あまり知られていませんが、汚泥吸排車は社会の中でとても重要な役割を果たしているのです。
ここではそんな汚泥吸排車のメリットとデメリットを解説します。
知っておきたい汚泥吸排車のメリットとデメリットとは
汚泥吸排車にはさまざまな呼び方があり、汚泥吸引車・強力吸引車・ダンパー・バキュームダンパーなどとも呼ばれています。
外見はバキュームカーともよく似ていますが、バキュームカーよりも大型で、運転席とタンクの間に大型の真空ポンプを備えていることが大きな特徴です。
この真空ポンプによる吸引力は非常に強力で、液体から固体まであらゆる物質を吸引してしまうのです。
その能力を始めとするさまざまなメリットがある一方で、いくつかのデメリットもあり、使い方を間違えると大事故にもつながる危険性を秘めています。
これらのメリットとデメリットをあらかじめ知っておくことは、これから先、汚泥吸排車に関わる可能性のある人々には有益な情報となるはずです。
そうではない人々も、汚泥吸排車という車両が世の中でどのような役割を果たしているのかを知っていただけると思います。
汚泥吸排車のメリットとデメリットを順に見てみましょう。
汚泥吸排車のメリット
汚泥吸排車には排気量の多い真空ポンプが設置されており、強力な吸引力を発揮してさまざまな物質を吸引できることが最大のメリットです。
また、吸引物を貯蔵するタンクをダンプアップすることができ、迅速な排出ができることも大きなメリットです。
その他にもいくつかのメリットがあり、優れた機能を活かしながらさまざまな場所で活躍しています。
そんな汚泥吸排車のメリットを、それぞれ詳細にご紹介しましょう。
排気量の多い真空ポンプを使用した強力な吸引力
汚泥吸排車の最大のメリットは、強力な真空ポンプを備えていることです。
外見がよく似ているバキュームカーにも真空ポンプは設置されていますが、汚泥吸排車に設置されている真空ポンプは排気量が多いので、はるかに強力な吸引力があります。
汚泥吸排車は、基本的にはバキュームカーのような「し尿」の吸引は行いません。
その代わりに、この強力な吸引力によって、バキュームカーでは吸引できないさまざまな物質を吸引することができるのです。
また、汚泥吸排車には超強力吸引車と呼ばれる大型の車両もあり、より強力な吸引力を生み出す高性能な真空ポンプと巨大なタンクを備えています。
超強力吸引車は、とりわけ大量の汚泥や土砂を吸引する必要のある作業に利用され、土砂災害や洪水といった災害復旧にも活躍しています。
汚泥吸排車に吸引された物質は気密性の高いタンクに貯蔵され、外部に漏らすことなく衛生的に運搬することができます。
荷台をダンプアップし迅速な排出が可能
汚泥吸排車のもう1つの大きなメリットは、荷台となっている円筒形のタンクをダンプアップして、吸引した汚泥などを一気に排出することができる点です。
バキュームカーにはこのような機構はないので、汚泥吸排車の価値がより高まっている1つの要因です。
タンクは排出機構と押し出し機構を併せ持っており、それによって迅速な排出が可能なので、すぐに次の荷物の吸引作業に向かうことができます。
先述した強力な吸引力による素早い大量の吸引と、このダンプアップ機構による迅速な排出の両方ができることにより、高い輸送能力を実現しているのです。
液状のものから固形状のものまでさまざまな吸引が可能
汚泥吸排車はその強力な吸引力で、基本的に吸引ホースを通過できる大きさのものならば、液体・固体を問わず何でも問題なく吸引してしまいます。
そのため汚泥吸排車はとても応用範囲が広く、最も多い汚泥の吸引作業の他にも、漏洩した石油類の吸引や、石塊を含んだ土砂の吸引などにも使用されています。
吸引物はポンプを通過せず、吸引ホースのみを通過してそのままタンクに貯蔵されるので、固形物が混入してもポンプを傷めることなく吸引することができます。
タンク内を加圧して高所への排出が可能
汚泥吸排車には強力な真空ポンプが設置されており、タンク内を減圧して吸引力を生み出しますが、逆にタンク内を加圧することもできます。
タンク内を加圧することによって、排出の圧力を高めることができるので、汚泥吸排車の位置よりも高い場所への排出が可能です。
約5mまでの高所への排出が可能なので、高所にある貯蔵施設に向けて排出したり、他の車両の荷台に吸引物を排出することもできるのです。
吸引ホースを延長すれば広範囲の吸引が可能
汚泥吸排車の吸引ホースは、つなぎ合わせて延長することができるので、より広範囲の吸引作業を行うことができます。
地下深くの下水道や浄化槽、または排水路や河川など、高低差のある位置へもホースを下ろすことができるので、吸引作業の可能範囲はとても広いのです。
レンタルを利用することができる
汚泥吸排車にはレンタル車両が用意されているので、車両を購入しなくても利用することができ、いくつかの建設機械のリース会社などがレンタルを行っています。
頻繁に使用しない場合は、車両を購入して所有するよりもお得に汚泥吸排車を利用することができます。
汚泥吸排車のデメリット
汚泥吸排車にはたくさんのメリットがある一方で、いくつかのデメリットもあります。
強力な真空ポンプの能力を維持するためにはこまめなメンテナンスが必要であったり、吸引力の高さによるホースの取扱いの難しさという問題もあります。
また、汚泥吸排車そのもののデメリットだけではなく、汚泥吸排車で作業する際に発生するリスクなどもデメリットといえます。
汚泥吸排車のデメリットをそれぞれ詳細にご紹介しましょう。
真空ポンプのメンテナンスに手間がかかる
汚泥吸排車の要ともいえる真空ポンプは、その高いパフォーマンスを維持するためには日々のメンテナンスが欠かせません。
特に重要なのが潤滑オイルの管理で、オイルが劣化しないように定期的に交換しましょう。
劣化したオイルを使用し続けると、ポンプの焼き付きなどの故障の原因となります。
ポンプは繊細な機械なので、こまめにポンプ内の清掃するなど、不具合を起こさないように日々のメンテナンスにかなりの手間をかける必要があります。
現場での作業中にポンプの不具合が発生すると非常に面倒なことになり、作業を中断せざるを得なくなります。
ホースの取り扱いなど安全面には注意が必要
汚泥吸排車の作業には、安全面に対する高い意識を持って取り組む必要があります。
特に吸引作業中は、真空ポンプによる強い吸引力のために、吸引ホースに強い力が働くため、ホースの取り扱いには細心の注意が必要です。
例えば、吸引作業中にホースに空気が入ると、ホースが暴れることがあります。
ホースは金属のリングで補強されているため、跳ねたりして作業員に接触すると思わぬ事故を引き起こす可能性があります。
他にも、吸引作業中に作業員がホースに体の一部を吸引されて負傷した例があり、それほどに吸引力が強いので、間違って吸い込まれないように十分に注意しなければなりません。
吸引ホースはしっかり固定して使用するか、吸引中には絶対に近寄らないなどの対策が必要です。
また、タンクの扉の扱いにも十分に注意しなければなりません。
過去には、作業員がタンクの扉に挟まれて死亡する事故も発生しており、機器を操作する者と合図を出す者との確実な意思疎通が求められます。
車体のこまめな清掃が必要
汚泥吸排車は汚泥の吸引をおもな作業としており、車体が汚れることは避けられません。
他にも工場の廃棄物や建設現場の土砂などを吸引する作業を行うため、車体が汚れる機会が多くなっています。
車体の汚れを放置していると設備の不具合を引き起こす可能性もあるため、定期的な清掃が必要です。
緊急時の対応を求められることが多い
汚泥吸排車は、工場などからの油流出や、排水処理設備のような各種設備の異常による汚泥流出など、緊急時の対応に追われることが少なくありません。
いざというときに頼りになる貴重な存在ですが、作業員は24時間体制で準備しておく必要があります。
そのため、作業員には負担がかかっており、人員不足のときには疲れによる事故の危険性も危惧されています。
衛生管理が必要
汚泥吸排車の作業員は、時には不衛生な環境での作業を求められます。
排水路や側溝などに作業員が入って作業することもあり、衛生管理のために防護服に身を包んでの作業を行います。
防護服は気密性が高いので、特に夏季には厳しい暑さに耐えなければならず、非常に過酷な作業を求められることになります。
そのため3Kのイメージが根強く、若手が育たないことが問題視されています。
危険が伴う作業もある
汚泥吸排車は土砂崩れや洪水などの災害復旧にも使用されるため、二次災害に巻き込まれるリスクがあるなど、危険が伴う作業を求められることもあります。
災害復旧は人命に関わる重要な役目ですが、作業員は二次災害の危険とも戦っているのです。
それ以外にも、工事現場での作業は危険を伴うことがあり、河川の近くでの作業や、山間部での作業は足場の悪い場所での作業を求められることがあります。
工事現場の汚泥を除去する作業では、ぬかるみに足を取られないように注意する必要があるなど、事故に十分に注意して作業しなければなりません。
まとめ
汚泥吸排車は多くののメリットを活かして、ライフラインの維持や生産活動の補助から、災害の復旧まで毎日幅広く活躍しています。
その一方で、いくつかのデメリットもあり、特に汚泥吸排車の作業員が安全に作業できるような環境を整えることが必要です。
今や汚泥吸排車は社会になくてはならない存在になっており、これからも私たちの生活を陰で支えてくれることでしょう。