汚泥吸排車って何?特徴と使い方・注意点を解説

汚泥吸排車という車両がありますが、ご存じでしょうか。

よく知られているバキュームカーと外見が似ていますが、実はメカニズムも役割も異なるものです。

ここではそんな汚泥吸排車の特徴と使い方・注意点を解説します。

強力な吸引力を誇る汚泥吸排車の特徴と使い方・注意点は?

汚泥吸排車はさまざまな名称で呼ばれており、汚泥吸引車・強力吸引車・ダンパーと呼ばれることもあります。

汚泥吸排車の最大手メーカー「モリタエコノス」では、バキュームダンパーという名称を使用しており、商標登録もされています。

また、一見するとバキュームカーのようにも見えますが、実は少し違います。

汚泥吸排車の特徴と使い方・注意点を順に見てみましょう。

汚泥吸排車の特徴

汚泥吸排車にはいくつかの特徴があり、特に高度な真空状態を作り出すことによる強力な吸引力は他に類を見ないものです。

さらに、荷台をダンプアップできることも大きな特徴です。

汚泥吸排車の特徴をそれぞれ詳細にご紹介します。

真空ポンプによって高い吸引力を発揮する

汚泥吸排車は極めて高い吸引力を持っていることが最大の特徴です。

タンク内部を減圧して外部との気圧の差を作り、真空状態を生み出すバキューム装置を備えています。

この真空ポンプの排気量が大きいため、非常に高い吸引力を生み出すことができるので、汚泥などの吸引を大量かつ迅速に行うことができます。

ホースを使用して吸引する

汚泥吸排車はホースを介して汚泥などを吸引します。

このホースは金属製のリングで補強されているので、タンク内部が真空状態になってもホースが潰れることなく吸引作業を行うことができます。

吸引物はこのホースのみを通過してタンクに送られるため、ポンプを通らないので、ポンプを損傷する心配をすることなく作業を行えます。

また、吸引ホースは延長することができるので、より広範囲の作業も可能になっています。

円筒形の荷台をダンプアップすることができる

汚泥吸排車の最も大きな特徴の1つとして、円筒形の荷台をダンプアップすることができるというものがあります。

ダンプトラックのように荷台を持ち上げて傾け、タンクに収納された汚泥などを一気に降ろすことができるのです。

このダンプアップ機構に加えて、押し出し機構も併せ持っているため、収納物のスピーディーな排出が可能になっています。

高所への排出も可能

汚泥吸排車はバキューム装置を使用してタンク内部の圧力を下げることができますが、その逆に内部の圧力を上げることもできます。

タンク内を加圧することによって、車両から5m程度上までの高さへ収納物の排出が可能になっています。

この機能は、別の収納タンクへの移し替えや、トラックなどの他の車両への乗せ換えに便利です。

気密性の高いタンク

汚泥吸排車の荷台となっている円筒形のタンクは、非常に気密性が高く造られています。

タンク内が完全に密閉されているため、液状の汚泥でも外に漏らすことなく運搬できるので、衛生的です。

より強力な吸引力を持つ超強力吸引車もある

汚泥吸排車には大小さまざまなサイズがあり、積載できる容量の大きな車両は10トン以上の大型車もあります。

また、それらの大型車は吸引力も高く、超強力吸引車と呼ばれています。

高圧洗浄機を装備した車両もある

汚泥吸排車には高圧洗浄機を装備した車両もあります。

特に側溝や排水路の汚泥を吸引したあとの清掃に高圧洗浄機が便利で、高い圧力によって汚れを飛ばして流すことができます。

バキュームカーとの違い

汚泥吸排車には円筒形の荷台と大型のホースが設置されているので、一見するとし尿処理用のバキュームカーにもよく似ています。

しかし実際にはバキュームカーとは異なる仕様の車両です。

まず、汚泥吸排車は真空ポンプの排気量が非常に高いので、吸引力がバキュームカーよりもかなり高くなっています。

その高い吸引力によって、バキュームカーでは吸い込むことのできない物を吸い取ります。

また、汚泥吸排車は吸い上げのために車両の動力を使用するのに対し、バキュームカーは車両の動力とは別の機構で吸引を行います。

汚泥吸排車は基本的に、し尿の吸引は行いません。

また、汚泥吸排車にはバキュームカーにはないダンプアップ機能があり、吸引だけではなく排出もスピーディーでパワフルなのです。

汚泥吸排車の使い方

汚泥吸排車の特徴を活かすために、どのような使われ方がされているのでしょうか。

汚泥や石塊などを吸引できる汚泥吸排車は、さまざまな場面で活躍し、私たちの生活を陰で支えてくれているようです。

汚泥吸排車の使い方をそれぞれ詳細にご紹介します。

吸引装置の使用方法

汚泥吸排車で汚泥や石塊を吸引するときは、タンクの内部を減圧することから始めます。

タンクに設置されたバキューム装置により外部との気圧差を生み出し、真空状態を作り出すことにより吸引することができます。

汚泥吸排車は吸引力が非常に高いので、ホースを通過できる物質ならば容易に吸引することができます。

側溝や排水路に堆積した汚泥の吸引

側溝や排水路には汚泥が溜まりやすく、定期的に清掃しなければ流れが滞ってしまうので、汚泥吸排車によって汚泥を吸引します。

側溝や排水路の清掃は、汚泥吸排車が最も多く使用される作業の1つです。

上下水道の汚泥の吸引

上下水道には「ろ過槽」という設備があり、フィルターが設置されているので、通過できない成分が汚泥となって堆積していきます。

このような汚泥を取り除く作業も、定期的に汚泥吸排車が行います。

ビルの上水タンクの清掃

大型のビルには、屋上や地下に上水タンクが設けられており、長期間使用していると汚泥が溜まってきます。

この汚泥も、おもに大型の汚泥吸排車を使用し、定期的に吸引して衛生的な状態を保っています。

工場排水に含まれる汚泥の吸引

工場ではさまざまな生産の過程で汚泥を排出するので、多くの工場には汚泥を溜めておく槽が設けられており、定期的に吸引が必要です。

工場排水は環境に影響のある物質も多いので、産業廃棄物として厳重に管理されており、確実に汚泥を除去できるように汚泥吸排車の役目も重要です。

工場では吸引する量も多いので、大型の汚泥吸排車が使用されます。

建設現場の汚泥の吸引

汚泥吸排車は建設現場でも使用されています。

特に工事が開始されたばかりの建設現場は、泥がむき出しになっていたり、水はけの悪い場所に汚水や石塊が溜まっていることがあります。

また、工事の過程で粉塵が発生することがあり、そこに雨が降ると汚泥となって溜まっていきます。

それらの除去を行うためにも汚泥吸排車が必要です。

土砂災害や洪水などの復旧作業

土砂災害や洪水などでは大量の汚泥や石塊が発生するため、その復旧作業では汚泥吸排車が大活躍します。

ライフラインの復旧など、地域住民にとって死活問題がかかっているので、その役割はとても重要です。

災害復旧には、おもに超強力吸引車と呼ばれる10トン以上の大型の車両が使用されます。

河川の浚渫(しゅんせつ)作業

河川ではおもに治水のために、川底の土砂を定期的にさらって流量を確保する作業が行われており、一般的には浚渫船や重機などが使用されています。

それほど大きくない河川の浚渫には、汚泥吸排車も使用されており、川底の土砂や泥を吸引して流量を確保し、治水に貢献しています。

河川の浚渫作業も、おもに超強力吸引車と呼ばれる10トン以上の大型の車両が使用されます。

吸引した汚泥の排出

汚泥吸排車で吸引した汚泥などは、排出場所まで搬送したのちに排出することになります。

汚泥吸排車は油圧式の排出機構を備えており、ダンプ機構と押し出し機構を同時に使用してスピーディーに排出を行うことができます。

また、タンク内を加圧することにより5m程度までの高所への排出も可能です。

高圧洗浄機があれば清掃作業も可能

一部の汚泥吸排車には高圧洗浄機が設置されており、清掃作業も行うことができます。

一例としては側溝の清掃作業で、汚泥などを吸引したあとに高圧洗浄機の圧力で押し流すことにより、側溝の建設直後のような美しい状態に復帰させることができます。

汚泥吸排車の注意点

汚泥吸排車には便利な特徴がたくさんありますが、その能力を十分に引き出すためには注意しておかなければならない点がいくつかあります。

汚泥吸排車の注意点をそれぞれ詳細にご紹介します。

真空ポンプのメンテナンス

汚泥吸排車の真空ポンプに使用されている潤滑オイルはポンプ内を循環するようになっており、能力を維持するためには定期的にオイルの交換が必要です。

劣化したオイルを使用し続けると、油圧系の各装置の焼き付きや破損の可能性があり、オイル漏れの原因にもなります。

また、真空ポンプを定期的に点検し、清掃することも能力の維持のために重要です。

各部分の清掃

汚泥吸排車の日々のメンテナンスで、清掃が必要な場所がいくつかあります。

特にオイルタンクの清掃が不十分であると、吸引物の影響でオイルの循環が悪化し、吸引力の低下を招いたり、ベアリングなどの各部品が損傷する可能性もあります。

また、マンホールも清掃が必要な場所で、十分に清掃がされていないときにタンクが汚泥で満たされると、最悪の場合は逆流する可能性もあります。

駆動部分のグリスアップ

専門業者に依頼するまでもなく可能なメンテナンスの1つとして、グリスアップがあります。

定期的にグリスアップをしておかないと、駆動部分の錆びや焼き付き、摩耗などを引き起こす可能性があります。

吸引ホースの取扱い

汚泥吸排車の吸引ホースは大型で、金属製のリングを内蔵しているので、頑丈に造られていますが、取扱いに注意が必要です。

吸引ホースに破損がないか日常的に点検し、破損がある場合は交換するなどの対応が必要です。

破損したホースをそのまま使用し続けると、吸引の圧力により破裂し、それによって作業員が負傷する事故の可能性もあります。

また、吸引ホースの取扱い中には、エアーの混入に注意が必要です。

エアーが混入すると、吸引ホースが暴れることがあり、それによって作業員が負傷したという事故の例も報告されています。

吸引ホースの暴れを防ぐためには、必ずホースを固定して吸引作業を行うようにしましょう。

まとめ

汚泥吸排車には便利な特徴がたくさんあり、さまざまな用途で活躍していることがお分かりいただけたと思います。

災害の復旧にも活躍するなど、重要な役割を担って社会に大きな貢献をしています。

この記事を参考に、使い方と注意点を理解していただければ、汚泥吸排車の能力を十分に引き出すことができるでしょう。

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