クレーン装置付トラックは建設業界や物流業界で活躍していますが、利用するメリットは何でしょうか。
また、デメリットは何があるのでしょうか。
ここではクレーン装置付トラックのメリットとデメリットを解説します。
クレーン装置付トラックにはこんなメリットが!一方で見逃せないデメリットも
クレーン装置付トラックには、「クレーン付き」と「簡易クレーン」と「ハイジャッキ」の3タイプがあります。
それぞれに特徴があり、得意な分野があるので、用途に合わせて利用することによってメリットを有効に引き出すことができます。
クレーン装置付トラックにはデメリットもありますが、事前に把握しておくことによって、適切な対応が可能です。
クレーン装置付トラックのメリットとデメリットをまとめてみましたので、順に見てみましょう。
クレーン装置付トラックのメリットを解説
クレーン装置付トラックを利用するとき、あらかじめメリットを知っておき正しく利用することによって、ポテンシャルを有効に引き出すことができます。
かなりの重量物まで自力で吊り上げることができるので、重機などの手を借りることなく積み下ろしが可能なため、時間の有効活用ができます。
以下で、クレーン装置付トラックのメリットをそれぞれ詳細にご紹介します。
クレーン装置付トラック全般のメリット
クレーン装置付トラックは、トラックとしての運搬業務と、移動式クレーンとしての吊り上げ業務の両方をこなすことができる点が最も大きなメリットです。
大型車のクレーン装置付トラックの中には、最大で5トン近い吊り上げ荷重の車種もあり、かなりの重量物も吊り上げることができるので、移動式クレーンとしても優秀です。
本来、トラックに重量物を積み下ろしする場合は、他のクレーンや重機などの手を借りなければならず、お互いの時間の都合もあるので運転手が時間的に拘束されることになります。
クレーン装置付トラックならば、自分で積みたいときに積み、下ろしたいときに下ろせるため、運転手の労働時間が大幅に削減されることになります。
また、自車だけでなく他車の荷台への積み下ろしも可能で、特に長いブームを持った車種は有利です。
アウトリガーを備えた車種ならば安定して荷の積み下ろしができるため、通常の移動式クレーンと遜色ない作業をこなすことができます。
クレーン付きのメリット
「クレーン付き」と呼ばれるタイプは、クレーン装置付トラックの中では最も一般的な車種です。
市販されている車種が非常に多いので、たくさんの車種から自分の好みに合ったものを選ぶことができるのがメリットです。
概ね吊り上げ荷重3トン未満の車種が多く、積載物の大きさに合わせてさまざまなボディサイズの中から選ぶことができます。
簡易クレーンのメリット
「簡易クレーン」は小型なため、ブームも2段から3段までしか伸ばす伸ばすことができませんが、取り回しが非常に楽です。
都心部などの狭い道が多い場所では、そのボディと作業半径の小ささが物を言うため、少なからず活躍の場があるのです。
税制上のメリットもある
「簡易クレーン」の場合は小型貨物車両での登録が可能なため、4ナンバーを使用することができ、税制上のメリットがあります。
クレーン装置付トラックの多くは特殊用途車両に分類され、8ナンバーでの登録になります。
ハイジャッキのメリット
「ハイジャッキ」は車体前部を大きく持ち上げることができるため、特にキャタピラ式の重機が荷台に自力で上がることができ、積載がとても便利です。
また、ジャッキアップによって傾斜のある地面でも安定した状態を作ることも可能です。
クレーン装置付トラックのデメリットを解説
クレーン装置付トラックにはデメリットもあり、事前に把握しておかないと困ることがいくつかあります。
たとえば、クレーン装置付トラックは便利な反面、機械的部位が増えるためにメンテナンスの必要があり、管理するための知識も求められます。
また、クレーン装置付トラックを購入したのにほとんど使用する機会がない、というような状況にならないために、適材適所を心がける必要があります。
以下で、クレーン装置付トラックのデメリットをそれぞれ詳細にご紹介します。
適正サイズのクレーンを選ぶのは簡単ではない
クレーン装置付トラックは非常に多くの種類があり、トラックの積載荷重からボディの長さまでさまざまな車種があります。
クレーンのサイズも多くの種類があるため、用途に合った吊り上げ荷重のものを選ぶ必要があります。
吊り上げ荷重が大きすぎるとスペックを持て余してしまうことになり、小さすぎると作業がはかどらないため、適正サイズのクレーンを選ぶ必要があります。
気軽に使用できるゆえの危険性
クレーン装置付トラックは車体に付けられたレバーや、リモコンでの遠隔操作など、単に動作させるだけならば簡単に動かすことができます。
ただしそこに落とし穴があり、本来クレーンは専門的な知識を持っている作業員が操作するべきものです。
ある意味、簡単に操作できてしまうことがデメリットともいえます。
クレーン操作のミスは深刻な人身事故や器物損壊などの重大な事故を引き起こすため、安全教育を受けた作業員以外には操作させないよう徹底しなければなりません。
大きな事故を起こしてから安全の重大さに気づいても遅いので、作業者本人はもちろん、上司や経営者も十分に安全教育を受ける必要があります。
クレーンの操作には資格が必要
クレーン装置付トラックに搭載されているクレーンを操作するには資格が必要で、所有していない人が操作すると法令違反になってしまいます。
操作するために必要な資格は、クレーンの吊り上げ荷重によって分けられています。
吊り上げ荷重が500kg以上1トン未満の場合は「運転のための特別教育」の修了証が必要です。
吊り上げ荷重が1トン以上5トン未満の場合は「小型移動式クレーン運転技能講習」の修了証が必要です。
吊り上げ荷重が5トン以上の場合は国家資格の「移動式クレーン運転士免許」が必要です。
また、クレーン装置付トラックは車体が中型車以上の場合がほとんどで、公道を運転するためにはトラックのサイズに合った運転免許証が必要です。
たとえ対応する免許を所有していても、普段乗用車しか運転しない人にとっては簡単に運転できるサイズではないため、クレーン装置付トラックの運転には熟練も必要です。
メンテナンスが増える
クレーン装置付トラックに搭載されているクレーンは油圧を使用しているため、普段から相応のメンテナンスが必要になります。
トラックのみでもパフォーマンスを維持するためにはメンテナンスが必要ですが、クレーンが加わるとさらに多くのメンテナンスが必要になります。
クレーンはワイヤーを使用して吊り上げを行いますが、ワイヤーは消耗品なので、こまめにチェックが必要なことと、定期的な交換も必要です。
クレーン部分のみならずアウトリガーもメンテナンスが必要で、このように多くの機械的部位を抱えているため、維持管理には通常のトラックよりもはるかにコストがかかります。
吊り上げ荷重の制限
クレーン装置付トラックの多くは吊り上げ荷重が3トン未満に抑えられています。
これは、吊り上げ荷重が3トンを超えると法令の関係上、手続きが煩雑になることが影響しています。
クレーン装置付トラックは最大で約5トンの吊り上げ荷重のクレーンがありますが、3トンを超える機種を所有するには相応の手間がかかることになります。
重量の大きな積載物を扱いたい場合は、そのことを念頭に置いておく必要があります。
アウトリガーがない場合はパンクの危険性もある
クレーン装置付トラックには多くの種類があり、中にはアウトリガーのない車種があります。
アウトリガーはクレーン作業を行うために車体を安定させる重要な役目を担っており、作業時には大きな負荷がかかります。
アウトリガーがないクレーン装置付トラックの場合、この負荷が車体のタイヤにかかってくるため、無視できないダメージが蓄積していきます。
アウトリガーのないクレーン装置付トラックを使用する場合は、吊り上げる荷重には十分に注意し、タイヤへのダメージも日常的にチェックする必要があるでしょう。
まとめ
クレーン装置付トラックにはメリットとデメリットがあり、それらを事前に把握しておくことによってポテンシャルを有効に引き出すことができます。
クレーン装置付トラックは非常に便利な反面、機械的な部位が増えるためにメンテナンスも必要で、受ける恩恵とかかる手間のバランスをよく考える必要があります。
とはいえ、クレーン装置付トラックは総じて扱いやすく、確かな知識を持って活用すれば大きな成果をもたらしてくれる素晴らしいツールなのです。