モータグレーダという建設機械をご存じでしょうか。
おそらくたいていの人が一度は見たことがあると思われる、独特の姿をしています。
ここではそんなモータグレーダの特徴と使い方・注意点を解説します。
力強さとスマートさを併せ持つモータグレーダの特徴と使い方・注意点は?
モータグレーダとは、走行しながら地面の凹凸をならしていくことを役割としている建設機械です。
元々「グレーダ」には自走できるものとけん引して使用するものがあり、自走できる車両のことをモータグレーダと呼びます。
名前はあまり馴染みがありませんが、ユニークな姿をしているので、愛好家の多い建設機械でもあります。
モータグレーダは私たちの生活にどのような影響を与え、どのような活躍をしているのでしょうか。
モータグレーダの特徴と使い方・注意点を順に見てみましょう。
モータグレーダの特徴
モータグレーダは、まずその姿に特徴があります。
前後に長い車体で、前輪が大きく前方に張り出しており、車両の下部に「ブレード」と呼ばれる地ならし用の器具を装着しています。
地ならしをする建設機械というとブルドーザーが有名ですが、モータグレーダはブルドーザーとはどう違うのでしょうか。
それも含め、モータグレーダの特徴をそれぞれ詳細にご紹介しましょう。
6輪で走行する建設機械
モータグレーダは車体後部に運転席とエンジンを配置した部分に4輪のゴムタイヤが装着され、運転席部分から前方に向かって長い柄(ブーム)が伸びています。
ブームの先端には2輪のゴムタイヤが装着され、合わせて6輪で走行します。
左右への操舵はブームの先端に装着された2輪で行います。
ブームには整地のために用いられるブレードが装着されており、走行しながら地ならしをすることができます。
さまざまな場所の地ならしを行う
モータグレーダは舗装されていない地面を平らにならすことに使用される建設機械です。
運転席部分から前方に伸びているブームの下部に装着された地ならし用のブレードが、地面の凹凸を削りながら走行します。
地ならしする際に余分となる土砂を片側に寄せることができるように、ブレードは斜めに装着されています。
地ならしをする場所は、ビルなどの工事現場や、道路を舗装する前の路面、荒れた広場の整地など用途は広く、冬季には除雪作業にも使用されます。
日本製は昭和初期に初登場
モータグレーダは1948年(昭和23年)に日本開発機から初めて国産のモデルが発売されて以来、いくつかのメーカーが製造を行っていました。
しかし日本開発機を含めてほとんどのメーカーはモータグレーダの製造を終了し、現在は国産メーカーではコマツのみ大型のモータグレーダを製造しています。
また、海外のメーカーが製造したモータグレーダも日本国内で多く使用されており、中でもアメリカのキャタピラーが有名です。
ブルドーザーとの違い
モータグレーダと同じく地ならしに使用される建設機械としてブルドーザーがありますが、それぞれに特徴があります。
ブルドーザーは悪路の状態を大まかに地ならしすることに用いられるため、車輪には悪路に強いクローラーを装着し、前方に大きなブレードを装着しています。
モータグレーダはブルドーザーで大まかに地ならしした場所をさらにならすことに用いられます。
モータグレーダに装着されているブレードはブルドーザーと異なり、走行時の振動が伝わりにくいので、ブルドーザーよりも滑らかに地ならしをすることができます。
路面の地ならしをする際には、ブルドーザーとモータグレーダがそれぞれの特徴を活かして併用されています。
モータグレーダの使い方
モータグレーダが実際に地ならしをするときには、どのような使われ方をするのでしょうか。
実はモータグレーダは地ならし以外の用途にも使用されています。
モータグレーダの使い方をそれぞれ詳細にご紹介しましょう。
舗装する前の道路の整地作業
一般的にモータグレーダを最も多く目撃する場面は、道路工事の現場だと思われます。
広い道路を建設する場合、アスファルトを敷く前の土台となる路面をならす作業が行われますが、そのときがモータグレーダの出番です。
道路の下地をならすときは、モータグレーダがゆっくりとした速度でていねいに路面をならし、その後にロードローラーで押し固めるという工程が行われています。
アスファルトを敷いた路面が安定するように、道路の下地をしっかり造るという、重要な役割を担っています。
建物を建設する前の整地作業
ビルや工場などの広い敷地に建物を建設する場合も、モータグレーダで地ならしを行います。
建物を建てる予定の場所を平らにならすことにより、建物の基礎工事を行いやすくすることができます。
特に大規模な工場の建設予定地は大変広いので、モータグレーダによる地ならしの能力が発揮される場面です。
宅地の造成
都市開発をするときに新しい宅地の造成は不可欠で、山地や丘陵地を整地することがあります。
山地や丘陵地に宅地を造成するためには、住宅が建つ場所を水平にしなければならず、その場合もモータグレーダによって平らにならす必要があります。
宅地を造成する際には、斜面の切り取り作業もモータグレーダで行われることがあります。
空港の建設地の整地作業
空港は私たちが一般的に利用する施設の中ではおそらく最も広いので、整地には1台のモータグレーダだけでは足りず、多くのモータグレーダを必要とします。
特に空港の滑走路は安全面を最大限に考慮し、絶対的な安定感が必要なので、モータグレーダによる丁寧な整地は欠かせません。
荒廃した土地の整地作業
建物を建設する場所に限らず、公園や運動場などの広い敷地を建設する場合でも、モータグレーダが活躍します。
広大な土地をならすときは、道路をならすときよりも高速で一気にならしていくので、モータグレーダの走り回る精悍な姿が見られます。
除雪作業
モータグレーダにとって、地ならし以外の代表的な役目の1つに除雪作業があります。
除雪に使用するモータグレーダを区別して、除雪グレーダと呼ぶこともあります。
豪雪地帯を訪れると、公営の除雪ステーションなどにモータグレーダが配置されているところを目撃することがあります。
モータグレーダは積雪時に、道路を走行しながら雪を路肩に寄せて走行することができます。
除雪車による除雪が困難な場合でもモータグレーダによる除雪を行うことができるので、豪雪地帯では重宝されています。
さまざまなアタッチメントを使用できる
モータグレーダは通常時はブームの下にブレードを装着していますが、ブレード以外のアタッチメントを装着することもできます。
アタッチメントの1つとしては、車体の最後部に装着する熊手のような形をしたリッパーがあります。
また、ブレードと前輪の中間に装着するアタッチメントとして、路面の凹凸を破砕するためのスカリファイアーもあります。
車体の最前方にブルドーザーのような大型のブレードを装着したり、除雪作業時に雪を左右に押しのけるために用いるスノープラウを装着することもあります。
陸上自衛隊の装備としても使用
モータグレーダは陸上自衛隊の装備としても使用されており、あらゆる路面の整地作業に使用されます。
一般的なモータグレーダと異なるのは、黄色の回転灯が装着されていることと、ボディカラーが他の装備と同じようにオリーブドラブ色に塗装されていることです。
陸上自衛隊のモータグレーダは、土砂災害時に道路が遮断されたときなどに出動することがあります。
モータグレーダの注意点
モータグレーダに実際に搭乗して作業を行うときは、どんなことに注意しなければならないのでしょうか。
実はモータグレーダは建設機械の中でも特に運転が難しいと言われており、注意すべき点がいくつかあります。
整地されていない路面を走行することが多いので、安全には特に注意しなければなりません。
モータグレーダの注意点をそれぞれ詳細にご紹介しましょう。
運転には資格が必要
モータグレーダに搭乗して整地などの作業を行う場合には、相応の資格を所有していなければなりません。
まず、モータグレーダで作業を行うためには、労働安全衛生法で定められた「車両系建設機械運転者(整地・運搬・積込・掘削用)」の受講が必要です。
さらに、モータグレーダは道路交通法上では大型特殊車両に分類されているため、公道を走行して作業するためには大型特殊自動車免許が必要です。
効率良く業務をこなすには熟練が必要
モータグレーダの運転には資格が必要なことは法律で決められていますが、実際に業務に就くには経験を積み重ねて技術を向上させる必要があります。
モータグレーダは建設機械の中でも特に運転が難しいと言われているのです。
運転席にはステアリングホイールの両脇に多くの操作レバーがあり、さまざまな操作を覚えなければなりません。
また、モータグレーダは全長8mを超える車体もある大型の車両なので、周囲が見づらいため死角が多く、慎重な運転が求められます。
特に除雪作業は熟練が必要と言われており、猛吹雪のような視界の悪い中での作業を求められることも珍しくありません。
除雪にあたる作業員は高齢者が多いことが問題視されており、豪雪地帯では後継者不足にも悩まされています。
荒れた路面を走行する場合には特に注意が必要
モータグレーダは地ならしを行うことが役割なので、荒れた路面を走行しなければならないことも少なくありません。
特に凹凸が激しい路面では、くぼみに車輪がはまってバランスを崩すこともあります。
モータグレーダは重心の低い車両ではありますが、バランスを崩すと転倒の危険性もあるので、無謀な運転は避けなければなりません。
また、宅地の造成などでは傾斜のある土地を平らにならす作業をすることもあるので、路面の状態などに細心の注意を払って走行しましょう。
古い形式の車両は安全面に不安がある
モータグレーダは大型の建設機械であり、周囲を見渡しにくい構造になっているので、近年はさまざまな安全装置が用意されています。
後方を確認できるカメラを装着することも可能なので、特に運転経験の浅い作業員が搭乗する場合には、安全のためにカメラの装着が推奨されます。
また、モータグレーダには多くの操作レバーがあるので、誤動作防止のためにレバーロックを設けることが望ましいとされています。
近年のモデルは、1つのレバーで複数の操作が可能なジョイスティックレバーを装備している車両もあります。
さらに、2015年度以降に生産された車両には、車体の転倒時に運転者を守る構造になっているので、可能な限り新しい車両に搭乗することが望ましいのです。
まとめ
モータグレーダは整地作業をするためには欠かせない建設機械です。
これまでも私たちの目に触れないところで、国土の開発や都市の発展に大きく貢献をしてきました。
この記事をきっかけにモータグレーダに興味を持っていただき、特徴と注意点をつかんで使用していただければ幸いです。