油圧式鋼管圧入引き抜き機は、1975年に誕生した建設機械。
「サイレントパイラー」という名前でも知られています。叩いたり振動させたりして杭を打っていた従来の方法と全く違う、画期的な杭打ちを可能にしました。
この記事では、そんな油圧式鋼管圧入引き抜き機を使用するメリット・デメリットをまとめます。
油圧式鋼管圧入引き抜き機を導入しようかと考えている方のお役に立てば嬉しいです。
1 油圧式鋼管圧入引き抜き機のメリット
1-1 騒音・振動を最小限に抑えられる
従来の杭打ち機は、騒音や振動がかなり大きいのが難点でした。杭に対して数トンもの重りを打ち付けたり、地面を震わせて杭を埋め込んだりするためです。
その点、油圧式鋼管圧入引き抜き機は騒音をかなり抑えることに成功しています。作業中に発生する騒音は、具体的な音量で言えば60デシベル前後。これは、1メートル離れた場所で普通の会話をする音量に相当します。
振動を抑えることに関しても優秀です。これは、埋まった杭から「反力」をもらって杭を埋め込んでいくという特性ならではのものです。
こうした特性により、規制の厳しい地域や夜間でも工事を行うことができます。
1-2 排土・泥水を抑えられる
杭打ちの工法の中には、事前に杭の穴を掘っておく工法があります。また、穴を掘り進めながら杭を埋め込むものもあります。
こうした工法は騒音が抑えられるのが魅力的ですが、同時に排土や泥水が多く発生するのが難点でした。
油圧式鋼管圧入引き抜き機での作業は、こうした排土や泥水の発生を最小限に抑えることができます。現場をきれいにするための手間を省き、スピーディな作業が行えるようになります。
1-3 ローコストで工事が行える
油圧式鋼管圧入引き抜き機は杭の上を自走できるため、移動させるための機械や手間が大きくカットできます。
また、操作は基本的にラジコンで行えます。それで、少ない人数で作業を行うことができます。
作業範囲もコンパクトに抑えられるので、交通規制などの範囲も最小限にすることができます。
杭の圧入・引き抜きがどちらも一台で行えます。機材を使い分ける必要がありません。
以上のような特徴ゆえに、油圧式鋼管圧入引き抜き機を使用することで作業コストを抑えることができます。
2 油圧式鋼管圧入引き抜き機のデメリット
2-1 パワーが低め
油圧式鋼管圧入引き抜き機は、他の杭打ち機と比べてパワーが低い傾向にあります。
最近では、パワーを補うために「ウォータージェット併用工法」が用いられることがあります。
これはジェットノズルで土を柔らかくし、杭を埋め込みやすくする工法です。これにより、パワー不足をある程度解消することもできます。
それでも、「ウォータージェット併用工法」でさえ対応できない硬さの地盤も存在します。その場合は、他の杭打ち機に頼らざるを得ません。
2-2 段差をつけて杭打ちすることは難しい
油圧式鋼管圧入引き抜き機は、すでに埋め込まれた杭を数本つかむことでエネルギーを得ます。
もし段差をつけて杭を埋め込んでしまうと、つかめる杭が減り、十分な力を得ることができません。
どうしても段差をつけて杭を埋め込む必要がある場合は、他の杭打ち機を併用しなければいけません。
3 まとめ
油圧式鋼管圧入引き抜き機の仕様により、騒音・振動をかなり抑えることができます。排土・泥水の発生も抑えられます。また、工事のコストカットにも大きく貢献します。
一方で、パワーが低いというデメリットもあります。また、段差をつけるような、特殊な杭打ちには対応できません。