「油圧式鋼管圧入引き抜き機」は、おもに基礎工事の現場で活用される建設機械です。「サイレントパイラー」という名称でも知られています。
この記事では、油圧式鋼管圧入引き抜き機の特徴・使い方・使用時の注意点についてまとめます。
1 油圧式鋼管圧入引き抜き機の特徴
油圧式鋼管圧入引き抜き機は、鋼矢板などを地中に埋め込む建設機械です。特に連続で鋼矢板を埋め込み、壁を作る作業で活躍します。
杭を埋め込む際には、すでに押し込まれた杭をつかむと生じる「反力」というエネルギーを利用します。その反力と油圧の力を合わせることで、地中深くまで杭を到達させることができます。
油圧式鋼管圧入引き抜き機は、次に杭を埋め込む場所まで自走することもできます。クレーン等でわざわざ移動する必要がないので、省スペースになり時間の節約にもなります。
名前に「引き抜き」と付いているとおり、油圧式鋼管圧入引き抜き機なら杭の引き抜きも行えます。杭の埋め込み用・引き抜き用と機械を分ける必要がなく、コストの節約にも繋がります。
鋼矢板などの杭を打ち込む建設機械は、従来にもたくさんありました。しかしその多くは作業音や振動が大きく、住宅街や都市部の作業は難しいのが現状です。
油圧式鋼管圧入引き抜き機は騒音も振動もかなり小さく抑えられるので、現代の住宅事情にかなりマッチしていると言えます。
2 油圧式鋼管圧入引き抜き機の使い方
2-1 最初の杭を打ち込むために「反力架台」をセットする
油圧式鋼管圧入引き抜き機で最初の杭を打ち込むためには、「反力架台」と呼ばれるパーツが必要です。
油圧式鋼管圧入引き抜き機の足元を固定する形で、この反力架台をセットします。この反力架台の上に、現場の土壌や杭の長さに応じてウェイトを乗せ、固定します。
2-2 杭の埋め込み
油圧式鋼管圧入引き抜き機に、埋め込む杭をセットします。杭は基本的に、クレーンで上から一本一本補充していきます。
最初は、反力架台によって反力を得ることで杭が埋め込まれていきます。数本埋め込まれたあとは、反力架台を取り除いても作業を継続できます。
2-3 方向調整
油圧式鋼管圧入引き抜き機は自走できます。
まっすぐに杭を埋め込むこともできますし、カーブさせながら杭を埋め込むこともできます。現場の必要に合わせて、油圧式鋼管圧入引き抜き機の進む方向を調整していきます。
3 油圧式鋼管圧入引き抜き機を使用する際の注意点
油圧式鋼管圧入引き抜き機を使用する際、埋め込む杭はクレーンで一本一本補充していきます。
大抵の場合、油圧式鋼管圧入引き抜き機のすぐ横に作業員が待機し、クレーンから運ばれる杭を誘導します。
この際、クレーンに吊られた杭が作業員に当たらないよう十分な注意が必要です。クレーンを操作する側も、杭を埋め込む場所で作業する側も常に安全確認を怠らないことが求められます。
また、作業範囲に人が入らないようにすることも必要です。作業範囲は分かりやすくマーキングしておく等の対策を取ることができます。
クレーンや吊り荷だけでなく、油圧式鋼管圧入引き抜き機自体の転倒事故にも注意が必要です。
実際に転倒事故による死者も報告されています。自走してくれるからと油断せず、常に作業中の異変がないか見守ることが重要です。
4 まとめ
油圧式鋼管圧入引き抜き機は、地中に埋まった杭からの「反力」と油圧を利用して杭を埋め込んでいく建設機械です。従来の杭打ち機よりも騒音や振動がかなり少ないのが特徴です。
最初の杭を打ち込む際には「反力架台」のセットが必要ですが、そのまま数本打ち込んだあとは杭の上を自走させながら作業が進められます。いちいち移動させなくてもいいので、作業時間や手間を削減することができます。
クレーンを使用して、埋め込む杭をその都度補充していく必要があります。その際、吊り荷による事故等が起きないよう、常に注意を払っておく必要があります。