作業前の準備が重要な玉掛け作業ですが、「少しでも効率的に作業したい」「少しでもケガするリスクを減らしたい」という想いは全作業者の共通認識だと思います。
そのような中、クレーン操作や遠隔操作で玉掛け外しが可能なフックが登場し、徐々に普及しているようです。
今回は、この「自動玉掛け外し装置」の特徴やメリットやデメリットついて紹介したいと思いますので導入について検討されている方の参考になれば幸いです。
尚、これらの装置を使用した作業についても玉掛け技能講習及び玉掛け特別教育の修了・資格が必要になりますので留意ください。
1.自動玉掛け外し装置って何?タイプ別にその特徴を紹介
自動玉掛け外し装置とはクレーンで吊り上げた荷物のワイヤーロープの「掛け・外し」を遠隔操作やフック本体の機構を利用して自動で行なえる装置です。
自動玉掛け外し装置を大きく分けると2つのタイプに分けられます。次からタイプ別に特徴を見てみましょう。
オートマチックフックの特徴
オートマチックフックを使用するとクレーンの上下操作のみで玉掛け・玉外しが可能になります。
フック本体にマグネットシステムが導入されているので、磁界で吊り具を引き寄せ、フックをかけるという機構になっています。
そして、フックに荷重がかかるとロックされ、荷重が無くなるとリリースされます。
遠隔造作タイプの特徴
離れた場所からリモコンによる遠隔操作で吊り荷の玉掛け・玉外しを行うことができます。
この遠隔操作タイプにもマグネットシステムを導入されており、吊り具を磁界で引き寄せることができるので自動でフックをかけることができます。
さらに、遠隔操作タイプにはフックにかかっている荷重や、荷重のバランスを数値でモニタリング可能です。
そのため、吊り上げる前に、吊り荷の修正(調整)が可能になります。
その結果、荷崩れなどの発生リスクを軽減できるので安全性の向上に期待できるでしょう。
2.自動玉掛け外し装置のメリット
自動玉掛け外し装置を使うことでどのようなメリットがあるのでしょうか?
安全性に優れている
クレーン現場の災害として多いのが「吊り荷への巻き込まれ・接触によるケガ」が多くを占めています。
自動玉掛け外し装置はワイヤー(スリング)を自動で引き寄せる機能や、リリースする機能が備えられていますので、人が介入する時間を減らしたり、吊り荷から距離をとる時間に余裕が生まれます。
そうなると必然的に安全性が向上することは容易にイメージできますね。
狭所や高所作業の負担が軽減できる
オートマチックフック、遠隔操作型それぞれに共通する機構として、人が作業することが困難な狭所や高所でも安全に玉掛け・玉外しが可能になります。
玉掛け・玉外し作業の負担が軽減できる
安全性に優れ、狭所や高所での作業が可能になるということは、それだけ人の移動や確認の手間、修正の手間を減らすことが可能になると思います。
そうなれば作業時間の短縮や、別の作業に注力することが可能になるなど効率が向上しそうですね。
3.自動玉掛け外し装置のデメリット
メリットだらけのような自動玉掛け装置ですが、デメリットは無いのでしょうか?
少し深堀りしてみました。
自働になるのは「フック」への掛けのみ
自働玉掛け外し装置という名称から、作業の全てを自動でやってくれそうですが勘違いしてはいけません。
自動化できるのはクレーンのフックにスリングやワイヤーを掛ける(リリース)する作業のみです。
むしろ荷物に対してのスリングやワイヤーの掛け方や、吊り上げ(リリース)の確認は、いつも以上に慎重に行う必要があるといえます。
そのような部分が一部の方についてはデメリットと捉えかねないと思います。
装置の故障によるイレギュラーが発生するリスクがある
どの分野でもそうですが、自働装置である以上イレギュラーは発生するリスクはゼロとは言えませんよね。
その点はデメリットとなるかもしれません。
取扱いに対する知識やスキルが必要
機構が異なれば取り扱いについてそれ相応の知識や安全教育が必要になるでしょう。
また、想定外な事象が発生するリスクに備えるために独自の点検項目やKYTが必要だと思います。
初期費用が高くなる可能性がある
通常のフックは数万~十数万で購入可能ですが、自動で玉掛け・玉外しが可能なフックはその機構から高価になる可能性が高いといえます。
4.まとめ
いかがでしょうか?今回は自動玉掛け外し装置の特徴やメリット、デメリットをそれぞれ見てみました。
自動玉掛け外し装置を導入することで、作業効率や安全性は確実に高まりそうですね。
ただ、イレギュラーによる災害の発生リスクはゼロというわけではなさそうなので、
導入後はKYTなどで改めてリスク抽出を行ったほうがよさそうです。
人では作業困難な現場や、災害が発生するリスクがある現場へ導入することで安全性が向上することについては間違いないのではないかなと思います。