モータグレーダは整地作業をする建設機械で、広範囲を効率的に地ならしすることができる便利な車両です。
しかし一般的にはあまり目にする機会がないため、その能力や問題点は知らない人が多いでしょう。
ここではモータグレーダのメリットとデメリットを解説します。
知って得するモータグレーダのメリットとデメリット
モータグレーダは前後に長い形状をした建設機械で、走行しながら運転席の前方下部に装着されたブレードを引きずることによって整地作業を行います。
一見単純に見える構造ですが、実は複雑な動きをするため、運転席にはたくさんの操作レバーが配置されており、運転も難しいと言われています。
それゆえ、モータグレーダの運転手は希少価値が高く、建設現場では重宝される存在で、活躍の場が多い職業です。
広い敷地を占める大規模な施設を建設するときには、モータグレーダによる整地が欠かせません。
そんなモータグレーダには、どのようなメリットやデメリットがあるのでしょうか。
特に、この先モータグレーダに関わる仕事をするかもしれない人ならば、知っておいて損はないと思います。
モータグレーダのメリットとデメリットを順に見てみましょう。
モータグレーダのメリット
モータグレーダにはたくさんのメリットがあります。
建設工事では、どこで何を建てるにしても最初に整地作業を行わなければなりません。
それが平地であるならば、モータグレーダは不可欠です。
宅地の造成のように、斜面を削って平地にする場合でもモータグレーダを使用します。
また、豪雪地帯の除雪作業にもモータグレーダは欠かせません。
そんなモータグレーダのメリットを、それぞれ詳細にご紹介しましょう。
広範囲の整地作業ができる
モータグレーダが最も能力を発揮するのが、広範囲の敷地を整地作業するときです。
ビルの基礎工事を行う前の地ならしや、大規模な工場、公園、スポーツ施設などの広い面積を占める施設の建設にはよく使用されます。
また、空港のような広大な施設の建設には1台ではとても足りず、たくさんのモータグレーダが活躍します。
さらに建設現場以外でも、例えば鉱山のような広大な敷地の地ならしにもモータグレーダが必要とされます。
ゴムタイヤを装着しているので、大型の建設機械としては機動力が高く、広範囲の整地をスピーディーに行う車両としては唯一無二の存在と言えます。
同じく整地作業を行うブルドーザーと比較すると、悪路に対する強さや力強さでは劣りますが、スピードや整地の精度ではモータグレーダがはるかに上回っています。
滑らかな整地作業ができる
モータグレーダには、運転席から前方に伸びているブームと呼ばれる柄があり、その下部に地ならし用のブレードが装着されています。
このブレードは、ブームに完全に固定されているわけではなく、吊るされているような状態なので、モータグレーダが走行することにより引きずられている形になっています。
このことは、モータグレーダが走行するときに生じる振動がブレードに直接伝わらないことになり、滑らかな整地作業が可能になっています。
車両の振動がブレードに直接伝わってしまうブルドーザーではそのような滑らかな整地はできないので、重要な基礎工事の前には必ずモータグレーダが使用されます。
除雪作業にも使用できる
モータグレーダは地ならし作業の他に、除雪作業にも使用することができます。
寒冷地や豪雪地帯の除雪ステーションにはたいていモータグレーダが配置されており、地ならし用のモータグレーダと区別して「除雪グレーダ」とも呼ばれています。
道路を走行しながらブレードで雪を道路脇に押しのける作業を行ったり、アタッチメントを使用して雪面を滑りにくくする作業も行います。
除雪車での除雪が困難な場合にも使用することができるので、豪雪地帯ではモータグレーダが重宝されているのです。
さまざまなアタッチメントを装着できる
モータグレーダは通常のブレード以外にも、さまざまなアタッチメントを装着することができます。
地ならし作業を効率良く行うためのものや、除雪作業の補助的な役目をするアタッチメントがあります。
よく使用されるアタッチメントは、車両の最後部に装着するリッパーという熊手状の爪や、ブームの下部でブレードの前方に装着するスカリファイアーという破砕機があります。
また、ブルドーザーのような大型のブレードを車両の最前部に装着することもできます。
除雪作業においては、車両の最前部に装着するスノープラウが使用されることがあり、雪を左右に押しのけながら前進できるようになります。
次々とハイテク装備が実装されている
モータグレーダは年々進化していて、新型の車両には次々と新しい高度な技術が導入されています。
特に安全面の改善は目覚ましいものがあり、転倒時に運転手を守る頑丈な構造の運転席を備え、誤動作を防ぐ安全装置などが至る所に装備されています。
以前から問題視されている操作性に関しても、運転席からの視界の改善や、ジョイスティックレバーによる操作の簡略化、各部分の電子制御化などが行われています。
また、環境に配慮した技術も導入されており、排気ガスがクリーンなエンジンを搭載したり、エンジンオイルの使用サイクルを長くすることにも成功しています。
モータグレーダのデメリット
モータグレーダには多くのメリットがある一方で、いくつかのデメリットもあります。
運転席からの視界の悪さは大型特殊車両ならではのものとも言えますが、モータグレーダは公道を走行することも多いので、より深刻な問題になっています。
それに加えて操作の難しさも問題の1つで、運転席に配置されている操作レバーが非常に多く、繊細な操作も求められます。
それゆえ、誰にでも簡単に運転できる建設機械ではなく、高い技術と豊富な経験が必要なので、若手がなかなか育たず、人材不足が問題になっています。
そんなモータグレーダのデメリットを、それぞれ詳細にご紹介しましょう。
運転席からの視界が狭い
モータグレーダは大型特殊車両のため、運転席からの視界は決して良好とは言えず、死角になって状況を確認しづらい場所もあります。
運転席からの視界の悪さは、新しいモデルが開発されるたびに少しずつ改善されてきていますが、それでも快適に運転できるとは言い難く、運転手の疲労が問題視されています。
近年のモデルには、後方を確認するカメラを装備している車両もあり、安全のために広く実装されることが望まれます。
取り扱っているメーカーが少ない
モータグレーダは1948年(昭和23年)に初めて国産の車両が開発され、以来数多くのメーカーが生産してきました。
しかし現在では、国産メーカーでモータグレーダを生産しているのはコマツのみになっており、当然ながら取り扱っている代理店も少なくなってきました。
海外のメーカーではアメリカのキャタピラーが日本法人を設立しており、日本国内でモータグレーダを販売しているのは、ほぼこの2社のみとなっています。
取り扱っているメーカーが少なく、代理店も減少していることにより、モータグレーダを使用していく際のアフターケアに注意する必要があります。
年式の古い車両は安全性に問題がある
モータグレーダは大事にメンテナンスし続ければ長年使用できる建設機械なので、中古車の販売も盛んに行われており、リーズナブルに購入するためには有効な選択肢です。
また、近年では建設機械をレンタルできる店舗も増えており、モータグレーダをレンタルすることも可能です。
そこで注意しなければならないことは、年式の古い車両は近年の車両に比べると、安全性に若干の問題があることです。
先述した安全装置は年式の古い車両には装備されておらず、また操作性も複雑なため、操作ミスの危険性もあります。
年式の古い車両を使用するときは、そのことを念頭に置いて運転する必要があります。
運転には資格が必要
モータグレーダを運転して作業を行うためには、法令で規定されている資格を所有していることが必要です。
これは決してデメリットではありませんが、誰でもすぐに運転できるわけではないことは知っておかなければなりません。
建設現場などの敷地内で整地作業を行うためには、労働安全衛生法で定められた「車両系建設機械運転者(整地・積込・運搬・掘削用)」の講習を受講することが必要です。
さらにモータグレーダは、道路交通法上では大型特殊自動車に分類されるため、公道を運転するためには大型特殊自動車免許を取得しなければなりません。
乗りこなすには高い技術と豊富な経験が必要
モータグレーダは、建設機械の中でも特に運転が難しいと言われています。
運転するためには資格が必要ですが、自在に乗りこなすためには資格だけでは不十分で、豊富な経験に裏付けされた高い技術が求められます。
近年のモデルには運転の難しさを軽減するシステムが導入され始めていますが、常に最新型の車両を運転できるわけではありません。
また、特に運転が難しいとされているのが除雪作業で、大雪に見舞われ吹雪の中で作業することもあり、視界が大変厳しい中で運転しなければなりません。
除雪作業の担い手は高齢者が多いため、豪雪地帯では深刻な後継者不足に悩まされています。
まとめ
モータグレーダには多くのメリットがあり、広範囲の整地作業においては他の追随を許さない能力を持っていることがお分かりいただけたでしょう。
一方でいくつかのデメリットもあり、将来に向けて各メーカーがそのデメリットを補うような魅力的なモデルを開発することが期待されています。
以前に比べてモータグレーダのメーカーが減少したために、近年では希少価値が高まっており、若手の運転手の育成も課題となっています。
この記事をご覧になった方がモータグレーダに興味を持っていただければ幸いです。