”ブルドーザー”といえば老若男女問わず誰もが知っている建設機械の代表格ではないでしょうか?
そんなブルドーザーですが、その特徴や現場での役割について聞かれると、
「ブルドーザーって現場ではどんな役割だっけ?」
「ブルドーザーってどんな特徴があるの?」
などと、意外と知らないことがあるのではないでしょうか?
今回はブルドーザーの歴史や特徴にフォーカスして徹底解説したいと思います。
整地ならお手のもの!パワフルなブルドーザー
建設機械の代表格”ブルドーザー”。平土機ともいいます。
履帯式トラクタにブレード(排土板)を装着して、スピードを緩めることなく土を押し進めて平らにしていくその姿はまさに”パワフル”そのもの。非常に魅力的な建設機械です。
そんなブルドーザーがどの様な経緯で開発され、どのような経緯で導入されたのか、それぞれを見てみましょう。
ブルドーザーの歴史
ブルドーザーの名前の由来は”bulldoze”で「強引に突き進む」という意味です。
約100年前のアメリカで登場し、その形状はすでに完成されていたのか現行品と比較してもあまり変化点がありません。
では、ブルドーザーが開発される前はどのような方法で整地していたのでしょうか?
そして、日本にはどのような経緯で導入されたのでしょうか?
一つずつ見てみましょう。
昔のブルドーザーは排土板を装着した馬車でした
ブルドーザーが登場する前は馬車の前に排土板(といっても普通の板)を装着し、その馬車を2頭の馬で引いて整地していたようです。
現在では5ヘクタール程度の土地であればブルドーザー1台で長くても2日あれば整地が完了するのですが、昔は7日間かけて整地していたようです。
馬は機械のように一定の速度や力で制御できないので、何度も繰り返して整地していたので余計に時間がかかっていたようです。
しかも、5ヘクタールの広さに対し馬車を5台(馬は10頭)ほど必要で、人手も足りないので非常に効率が悪かったことは容易に想像できます。
日本にブルドーザーが伝わったのは戦時中。小松製作所で開発されました。
日本とブルドーザーの出会いは太平洋戦争初期の1941年まで遡ります。
大日本帝国海軍が占領した島を整地するために、労働力を確保に躍起になっていたらしいのですが、当時の米軍工兵隊員がたった1両のアメリカ産のブルドーザーであっさりと整地してしまったそうです。
もちろん、日本にもブルドーザーらしきものが存在していたらしいのですが、パワーは低く、無理をすると履帯が切れてしまうほどの性能だったようです。
なので、アメリカ産のブルドーザーがパワフルに作業をする様を見て、当時の関係者は「これほどの技術と作業速度に差があるなら、日本はアメリカとの戦争に負けるだろう」と悟ったと言われています。
その後、このブルドーザーは小松製作所で国産化のための研究が行われ「小松1式均土機(G40型ブルドーザー)」が誕生し、約150台が量産されました。
小松1式均土機(G40型ブルドーザー)はコマツテクノセンターに1台が保存されており、日本機械学会の機械遺産に認定されています。
そして小松製作所はアメリカ・キャタピラー社に次いで、世界中の建設機械シェアTOP2となり、日本以外にグループ企業を展開されています。
ブルドーザーの特徴
ブルドーザーの主な役割は、土砂のならし、掻き起こしや盛土など整地に関係する作業全般を担っています。
ブルドーザーには装置前方のブレード(排土板)の他に、“リッパ”と呼ばれる地面に埋まっている石や岩を掘り起こし、押したり集めやすくするための爪のようなものが装置後方に設置されているものがあります。
そして、ブルドーザーは数種類のタイプで分けられ、目的に応じて使い分けられています。
また、ブレード(排土板)やリッパにも様々な種類があり、用途によって使い分けられます。
次より、その一部を紹介したいと思います。
ブルドーザーの種類
・ドーザーショベル
ブレード(排土板)の代わりに、ショベルカーのような大きなスコップを装着したブルドーザーです。
土砂を運んだり、盛土を作ったりすることに長けています。
・トリミングドーザー
表と裏の両面が使用可能なブレード(排土板)を装備した特殊なブルドーザーです。
進行方向に土砂を押すだけではなく、バック走行で引き寄せることもできます。
・水陸両用ブルドーザー
船が出入りできない浅瀬や狭い水路での作業を担っています。
操縦は車体上部に組んだ“やぐら”の上で操作するか、陸地から無線で操作するなど、当初から遠隔操縦が見据えられており、「遠隔操作による施工」の最初の例でもあるそうです。
・水中ブルドーザー
ダイバーによる有線遠隔操作で、海底での作業を可能にしたブルドーザーです。
ブレード(排土板)の種類
・ストレートドーザ
ブルドーザーの標準的なブレード(排土板)です。砂利のならしに長けています。
・Uドーザ
U型に拡張したブレード(排土板)で排土容量を増やすことが可能です。
・アングルドーザ
ブレード(排土板)をフレームに取り付けるピンの位置を変えることによってアングルを変更できる。
そのことによって土や砂利を片側に寄せたりすることができます。
・レーキドーザ
ブレードがリッパのような形状をしており、除根用として山林開拓地で使用されます。
・ツーウェイドーザ
トリミングドーザーと同様に表と裏の両面が使用可能なブレード(排土板)で、押しても引いても使用可能です。
・バケットドーザ
掘削した泥や砂利の長距離運搬を可能にするべくバケットが装着されたブルドーザーです。
リッパの種類
・マルチシャンクリッパ
3本爪の標準的なリッパで岩盤の硬さによって爪の本数が変更可能です。
・ジャイアントリッパ
大型の1本爪のリッパです。爪が長いので深堀が可能です。
・パラレルリンク
貫入深さを変えても貫入角度が一定になる機構が設けられたリッパです。
・ヒンジ式
複雑ではない機構で安価で導入できるのですが、貫入深さによって、シャンク角度が変わってしまう欠点があり、近年のブルドーザーにはあまり採用されていないようです。
ブルドーザーの使用時の注意点について
整地が必要な現場には欠かせないブルドーザーですが、関係者が絶対に認識しておかなければならない注意点が労働安全規則で定められています。
何故、このような規則が定められているかというと、過去に同じような事例で人命にかかわる災害が発生したためです。
以下に運転時の注意点を一部紹介しますので参考にしていただいて安全作業をお願いします。
ブルドーザーの特性についての注意点
・ブルドーザーは、機械の前後方向よりも左右方向に転倒しやすい。
・ブルドーザーで崖などから土を落とした瞬間や、坂道を上がりきった時には、急に装置に対しての負荷が減り前方への速度が上がります。
機械運転の資格
当然ですが、ブルドーザーの操縦者は資格(技能講習・特別教育)が必要です。
ブルドーザーの運転に関する注意点(一部抜粋)
・エンジン始動時や動作開始時は周囲に注意し、警告のためのホーンを鳴らしてください。
・運転者以外人を乗せないでください。
・シートベルトを確実に着用してください。
・走行する時は、転倒しないように低速で走行し急制動につながる操作はしないでください。
・前後左右に大きく傾く障害物の乗り越えはしないでください。
・傾斜地走行時は斜面に沿って真っすぐ走行してください。傾斜地を斜めに走行したり、水平方向に走行すると転倒などに繋がるため非常に危険です。
・水平で地盤の固い場所を選んで、作業機を地面に接地させてください。
・やむを得ず傾斜地に駐車するときは、作業機を谷側に向けてください。
まとめ
いかがでしょうか?
ブルドーザーが開発・登場するまでの歴史や、普及するまでの経緯について紹介させていただきました。
ブルドーザー本体の種類だけではなく、ブレード(排土板)やリッパについても多くの種類があり、目的別に使い分けながら作業されていることが理解できたと思います。
開発から約100年たった現在でも現役で働くブルドーザー。今後も成長や進化を繰り返しながら活躍する姿を見ていきたいですね。