ニューマチックケーソン工法とは、橋の橋脚や、地下構造物、高層建設物の基礎を築造するための工法です。
コンクリートや鋼板で作られた函(ケーソン)の中を圧縮空気で満たし、地中から湧き出る地下水の流入を防止しながら函(ケーソン)の下部を掘削しながら地中に沈めていきます。
この記事ではニューマチックケーソン工法の特徴や、施工時の注意点、施工時に導入される建設機械について詳しく解説します。
ニューマチックケーソン工法とは?
ニューマチックケーソン工法とは「空気の函」を用いて基礎工事のために地盤掘削を行う工法です。
日本では「潜函工法」ともよばれています。
コップを逆さにして内部の空気が抜けないように水中に押し込むと、コップ内部は空気で満たされている原理と同じです。
では、ニューマチックケーソン工法はどのように発展してきたのでしょうか?
1-1 ニューマチックケーソン工法の歴史
ニューマチックケーソン工法の原型は1840年代にフランスで開発されたエアロックを使用し、地下約20mまで掘進させることに成功した事例が発展し地盤掘削時の工法として定着したことが始まりとされています。
19世紀後半にはアメリカのブルックリン橋の基礎や、セントルイス橋の基礎などで採用されています。
20世紀初頭にはニューヨークの下町に建てられた超高層ビルの基礎工事の多くにもニューマチックケーソンが工法が採用されています。
1-2 ニューマチックケーソン工法が導入される理由
実はニューマチックケーソン工法は諸外国では避けられ採用されることが少なくなっています。
しかしながら、欧米と異なり、日本ではこの工法が消滅することはありませんでした。
その理由は、他工法との競争への生き残りを賭けて、高能率で低価格な工法にするための懸命な技術開発が行われ、圧気作業室内における掘削作業の機械化(天井走行式掘削機など)、合理的なケーソン基礎構造物の設計手法の確立、主要な作業の遠隔操作による無人化技術などの技術革新とコスト縮減に成功したからです。
そして、日本は地震大国であるという理由も起因しています。
1964年(昭和39年)6月の新潟地震では、ニューマチックケーソン工法を採用した萬代橋での被害がほとんどなく、1995年(平成7年)1月17日の兵庫県南部地震でもニューマチックケーソン工法で施工したものは被害をほとんど受けなかったことから、ケーソンは予想以上に地震に強い構造物という事実が判明し注目を集めています。
2.ニューマチックケーソン工法に導入される建設機械
2-1 天井走行式電動ショベル
1970年代までは作業員がスコップで人力掘削を行っていました。
ケーソン内での人力掘削は減圧疾患を発生させるリスクが高いため、掘削補助を目的として函内ブルドーザー、函内ショベルが導入されましたが結局は作業員が操作するため減圧疾患のリスク軽減には至りませんでした。
そのような中、電動化・無人化の開発が進み天井走行式の電動ショベルが誕生しました。
天井走行式の電動ショベルはケーソンに固定した強固な天井レールを走行するので、掘削地盤の強度に影響することなく軟弱層にも対応できることが強みです。
地上制御室でショベルを遠隔操作し、掘削土砂をアースバケットに積込み排土する仕組みです。
2-2 マンロック・マンシャフト
艤装設備の一種で圧気作業現場への作業員の出入口です。
無人化施工システムにより、安全性が向上したものの、機械設備のメンテナンスや解体などの特殊作業は作業員の介入が必要です。
ケーソン内の大気は高気圧になっているので、そのまま地上に帰還すると高気圧障害を発症するリスクがあります。
そのため、マンロック内には酸素減圧システムなどでエアブレイクし地上に帰還する方法が取り入れられています。
2-3 マテリアルロック・マテリアルシャフト
艤装設備の一種です。
圧気掘削場所へ材料を搬入したり、排土を積込んだアースバケットを搬出するための気密扉です。
マテリアルロックから出る排気音や漏気音は大きく、消音マフラーを装着するなどの対策が必要です。
2-4 排土設備
排土設備にはケーソン内の掘削土を積上げるアースバケットや、アースバケットを吊り上げる大型のクローラークレーン、アースバケットから土砂を受け取りダンプトラックに移すための土砂ホッパー、そして土砂を運搬するためのダンプトラックが導入されます。
2-5 送気設備
送気設備には圧縮空気を作り出す電動コンプレッサー、コンプレッサーから吐出された空気の脈動やインチングを防止するためのレシーバタンク、クリーンなエアーを作り出す空気清浄機などが導入されます。
3.まとめ
今回はニューマチックケーソン工法の特徴と導入される建設機械を紹介しました。
ニューマチックケーソン工法の特徴については以下の点がわかりました。
①ニューマチックケーソン工法は1840年代に誕生し発展してきた古い工法である。
②地震大国である日本の基礎工事にはニューマチックケーソン工法が積極的に取り入れられている。
さらに、ニューマチックケーソン工法に使用される建設機械は以下の種類があります。
①無人化・安全性の向上を実現した天井走行式電動ショベル。
②艤装設備の一種で圧気作業現場への作業員の出入口となるマンロック・マンシャフト。
③艤装設備の一種で材料の搬入や掘削土の排出口となるマテリアルロック・マテリアルシャフト
④排土設備にはアースバケット、クローラークレーン、ダンプトラックが導入される。
⑤送気設備には電動コンプレッサー、レシーバタンク、空気清浄機が導入される。
以上、ニューマチックケーソン工法の特徴と導入される建設機械の紹介でした。
今後も日本の建設物の基礎工事を支える工法として発展し続けることでしょう。