建設用リフトとはどのようなものか、ご存じでしょうか。
ビルや地下設備の建設には欠かせない機械で、今日も日本各地で都市の開発に大きく貢献しています。
ここでは建設用リフトの特徴と使い方・注意点を解説します。
知っておきたい建設用リフトの特徴と使い方・注意点
建設用リフトは、人ではなく荷物を載せて上げ下げをするもので、簡単に言えば荷物専用のエレベーターです。
一般的には積載荷重が0.25トン以上で、ガイドレールの高さが10m以上のものを指します。
また、比較的低階層へ荷の上げ下げを行い、積載荷重も少ない「簡易リフト」とよばれるものもあります。
建設用リフトはそれぞれ積載荷重が決まっており、大型のもので概ね1トン程度までの荷を積載することができます。
建設用リフトを実際に目撃することがあるのはビルの建設現場ですが、実は地下や海中の設備を建設するときにも使用されています。
使用するにあたって注意する点もあり、ちょっとした不注意が重大な事故を引き起こす可能性を秘めていることを念頭に置いておく必要があります。
建設用リフトにはどんな特徴があるのか、どんな使い方をするのか、注意点は何か、順に見てみましょう。
建設用リフトの特徴
建設用リフトは大きな高低差のある場所に資材を運搬するための設備ですが、高い場所へ運搬する役割は一見するとクレーンとかぶっているようにも思えます。
しかし実際にはクレーンとは得意な作業が異なるため、棲み分けがなされています。
また、建設用リフトにはクレーンにはない強みもあるため重宝されています。
以下で、建設用リフトの特徴を、それぞれ詳細にご紹介します。
クレーンを使うまでもない軽量の材料の運搬に最適
建設用リフトは、高低差のある場所へ資材を運搬するために設置されますが、高い場所へ資材を運搬するときに使用される機械としては、クレーンが一般的です。
クレーンは重量物を高い場所へ運搬することには向いていますが、それほど重量が重くない資材をクレーンで運搬することは決して効率の良いことではありません。
なぜなら、クレーンは荷が軽くても動作に燃料を消費するために、重量の小さな荷を吊って頻繁に上げ下げを行うことは、能力を持て余すことになるからです。
一方で、建設用リフトは電力で駆動しており、クレーンほど重い荷を運ぶことはできませんが、比較的少ないエネルギーで荷を運ぶことができます。
頻繁に上下に往復できる
建設用リフトは、最大でも積載荷重は1トンほどです。
積載荷重がそれほど重くない代わりに、頻繁な上げ下げをすることに向いています。
建設中の現場には資材置き場が十分に確保されていないこともあり、どうしても少量ずつの資材供給が必要なことがあります。
そのような場合に、頻繁に上下に往復することに向いている建設用リフトは大きな役割を果たします。
このことは、作業現場への資材の供給を円滑にし、建設作業の効率化を促す効果をもたらしています。
天候の影響を受けずに運搬ができる
建設用リフトがクレーンに対して優れている点として、天候の影響を受けにくいことが挙げられます。
クレーンは強風が吹いているときは作業が困難で、雨天時にも運転士の視界が遮られ、満足な作業をすることができません。
一方で建設用リフトは悪天候時でも問題なく運搬作業をこなすことができます。
操作が簡単
建設用リフトはエレベーターのように押しボタンで操作するため、操作そのものは簡単です。
ただし、大きな高低差のある位置へ資材を運ぶので、安全に作業するためには専門的な知識をしっかり学んだ作業員が操作を担当しなければなりません。
建設用リフトの使い方
建設用リフトは高低差のある場所へ資材を運搬する役目を担っているので、ビルの建設のときは重要な役割を果たします。
その他、地下や海中などの低い位置へ資材を運搬する際にも欠かせない設備です。
以下で、建設用リフトの使い方を、それぞれ詳細にご紹介します。
ビルの建設工事
一般的に最もよく目撃する建設用リフトは、ビルの建設工事で使用されているときです。
一定以上の階層のビルを建設するときには必ず使用されているため、誰もが目撃したことがあるでしょう。
エレベーターと似ていますが、人は乗せずに資材だけを運搬します。
地下の設備工事
一般的には人の目に触れることはありませんが、地下設備の工事でも建設用リフトは重要な役目を果たしています。
最も多く使用されているのは、ビルの地下階層の建設工事で、大規模なビルに建設される広大な地下エリアの工事に建設用リフトは欠かせません。
また、大都市においては地下鉄の駅を建設するときにも使用され、建設用リフトはインフラの整備という重要な役目を果たしています。
地中に電気・電話・水道・ガスなどのさまざまなライフラインを集積した「共同溝」とよばれる巨大な地下トンネルを建設するときにも、建設用リフトは不可欠です。
さらに、鉱山の採掘や産業廃棄物の処理など、地底深くに荷を運搬したり、地上に荷を上げるためにも使用され、作業の効率化に大きな貢献をしています。
海中の設備工事
あまり知られていませんが、海中の設備を建設するときにも建設用リフトは使用されています。
現在は海中に重要な設備が多く建設されており、インターネットなどに使用される海中ケーブルの設置や、海底資源を開発するための設備も存在しています。
また、海上に建設する空港などは海中で基礎工事を行うため、数多くの建設用リフトが必要です。
建設用リフトを使用するときの注意点
建設用リフトは構造や操作方法はエレベーターとほぼ同じなので、操作は難しくありません。
しかし安全に作業するためには専門的な知識が必要で、一定以上の規模の建設用リフトの操作には法規で定められた講習を修了している作業員が担当する必要があります。
また、工事現場で建設用リフトを実際に使用するためには、届け出などの法規で定められた過程を経て行う必要があり、事故が起きないように安全第一で作業しなければなりません。
以下で、建設用リフトを使用するときの注意点を、それぞれ詳細にご紹介します。
人を乗せて運転してはならない
建設用リフトは、人を乗せて運転してはならないことが、労働安全衛生法に基づいた「クレーン等安全規則」という法規によって定められています。
例外としては、建設用リフトを修理・調整・点検するときで、安全が確保できる場合にのみ作業員の乗り込みが許可されています。
建設用リフトに人を乗せて運転したことによる事故の報告も挙がっており、修理・調整・点検をするときであっても細心の注意を払わなければなりません。
過積載は絶対にしない
建設用リフトにはそれぞれ積載荷重が決められており、積載荷重を超えて作業をすることは禁じられています。
建設用リフトの製造と設置を行うときには設備の概要を報告しなければならない義務があり、積載荷重を報告しなければなりません。
積載荷重を超えて作業をすることは、報告内容を偽っていることになり、重大な過失となります。
事故を防ぐためにも、絶対に過積載をしないようにしましょう。
運転には労働安全衛生法で定められた講習の受講が必要
建設用リフトを運転するためには、労働安全衛生法で定められた「建設用リフトの運転の業務に係る特別教育」を受講し、修了証を受ける必要があります。
修了証を受けた者は「建設用リフト運転士」として業務にあたることができます。
講習を修了すると、積載荷重0.25トン以上でガイドレールの高さが10m以上の建設用リフトを運転することが可能になります。
積載荷重0.25トン未満でガイドレールが10m未満の建設用リフトの運転には講習の修了は必須とされていませんが、安全衛生上は修了しておいたほうが望ましいです。
製造と設置に届け出が必要
建設用リフトは、まず製造するために労働基準局長へ報告し、許可を得なければなりません。
その際には、建設用リフトの概要など指定された項目を報告する必要があります。
また、報告した設備の内容に変更があった場合は、遅滞なく労働基準局長に報告する義務があります。
次に、製造された建設用リフトを使用するために設置するときは、労働基準監督署長に届け出をしなければなりません。
このように建設用リフトは、製造から設置、運用まで管理されており、勝手に使用することはできない設備なので、使用には大きな責任が伴います。
まとめ
建設用リフトは一般的に目にするのはビルの建設など高所の作業現場ですが、地下や海中などの設備の建設にも使用されています。
さまざまなメリットがありますが、操作するためには専門的な知識が必要で、法規で定められた講習を修了した者が担当しなければなりません。
建設用リフトはそれだけ重要な役割を担っており、大規模な建設作業に欠かせない設備で、今後もますます活躍することが期待されます。