街に出れば、頻繁にその姿を見ることができるダンプトラック。
その優れた運搬能力で、建設業に大きな貢献をしていますが、あまり知られていない欠点もあるようです。
ここではダンプトラックのメリットとデメリットを解説します。
知って嬉しいダンプトラックのメリットと、知らないと損をするデメリット
ダンプトラックは陸上輸送の要の1つで、あらゆる建設業において欠かせない存在です。
では、ダンプトラックにはどのようなメリットがあって今日までの活躍ができたのでしょうか。
また、決して魅力的なことばかりではないダンプトラックには、どのようなデメリットがあるのでしょうか。
ダンプトラックのメリットとデメリットを順に見てみましょう。
ダンプトラックのメリットを解説
ダンプトラックには見た目通りの力強さはもちろん、見た目とは裏腹な運転のしやすさなどのメリットがあります。
また、ダンプトラックのドライバーという職業にも、他の職業にはない意外な魅力があるのです。
以下で、ダンプトラックのメリットをそれぞれ詳細にご紹介します。
土砂を運搬することに特化している
ダンプトラックは、そのずんぐりした車体からも連想されるように、非常にがっしりとした造りになっています。
密度の高い重量物を大量に運搬するために、物理学的にも理にかなった形状をしているのです。
そして積載した土砂を自力で下ろすことができるということも、作業効率を大幅に向上させており、ダンプトラックの価値を高めています。
運転席が高くて視界が広い
大型のダンプトラックは、土砂などの密度の高い重量物を荷台に大量に山積みにして運ぶことを役目としています。
そのため、他の大型トラックと比べると積載重量のわりには車体が短く、かつ頑丈に造られており、その車体を支える大きなタイヤを装着しています。
車体の頑丈な造りとタイヤの大きさのため、運転席が非常に高い位置にあることが特徴です。
運転席が高い位置にあることは、車体の周辺を見渡しやすいことにつながり、特に前方は遠くまで状況を把握することができます。
初めて大型ダンプトラックを運転するときは、その巨大な車体に圧倒される人が多いと言いますが、実際に運転してみると周囲が見渡しやすいと実感するドライバーも多いようです。
ホイールベースが短いので小回りが利く
ダンプトラックは土砂などを運ぶのが役割なため、他のトラックのように長尺物を積載することはないので、積載重量のわりには車体が短く造られています。
前輪と後輪の距離のことをホイールベースといいますが、密度の高い重量物をしっかり支えるために車体が短くなっており、それゆえにホイールベースも短くなっています。
ホイールベースが短いことは、ダンプトラックが左右に旋回するときにそれほど大きな半径を必要としないことにつながり、車体の大きさのわりには小回りが利くのです。
車体の幅は2mを超えるため、狭い道を走ることには向いていませんが、旋回に関しては乗用車に近い感覚で行うことができるでしょう。
運転が好きな人にとっては一つの天職
ダンプトラックに限ったことではありませんが、運転が好きな人にとってはドライバーという職業は楽しいものとなります。
特にダンプトラックは車体がとても大きく、大型の車両を意のままに操るという充実感は、普通車の運転では味わえないものです。
運転が好きな人にとっては、ダンプトラックのドライバーは1つの天職とも言えるでしょう。
運転手は基本的に一人で仕事ができる
ダンプトラックのドライバーは、運送会社などの企業に所属する会社員の人もいれば、請負で仕事をする個人事業主の人もいます。
しかし、どちらの場合でも運転中は基本的に一人で作業を行います。
そのため、対人の仕事がほとんどないので、人間関係のストレスを抱えることはほとんどありません。
もちろん、所属する企業内での人間関係や、搬入先の人々との付き合いなどはありますが、勤務時間内のほとんどがダンプトラックの運転です。
運転中は好きな音楽やラジオを聴いたり、無線で会話することもできます。
一人で気ままに仕事がしたい人には向いている仕事だと言えるでしょう。
走行するルートは決まっていることが多い
特に大型のダンプトラックは、指定された採石場などで荷物を載せ、どこかの決まった建設現場などに輸送したり、その逆の輸送などをすることになります。
大規模な工事は長期間に及ぶため、ダンプトラックは一定の期間中は同じルートを往復することになります。
長距離トラックのように不慣れな土地へ輸送することはほとんどなく、しばらくの間は毎日同じルートを走ることができるので安心です。
重ダンプトラックには車検が必要ない
ダンプトラックには、公道を走ることができない巨大なサイズのモデルも存在します。
それらは重ダンプトラックなどと呼ばれており、大規模なダムの建設現場や、鉱山の露天掘りの現場などで活躍しています。
重ダンプトラックは公道を走ることができない代わりに、車検を受ける必要がありません。
そのため、巨大な車体のわりには維持費が抑えられるので、その運搬能力を考えると非常に価値の高いダンプトラックです。
ダンプトラックのデメリットを解説
多くのメリットがあるダンプトラックですが、残念ながらデメリットもあります。
これからダンプトラックのドライバーを職業とする人たちは、そのようなデメリットも踏まえたうえで仕事に取り組むと良いでしょう。
以下で、ダンプトラックのデメリットをそれぞれ詳細にご紹介します。
車体が大型で運転には危険が伴う
ダンプトラックは大量の土砂を運ぶことがおもな役目なので、多くは大型車です。
それに加えて、ダンプトラックは車輪がとても大きいので、運転席からの視界も他の大型トラックとは異なり、非常に高い位置に運転席があります。
視界が高いことはメリットでもありますが、運転席から見えない死角が多く、ダンプトラックを自在に乗りこなすためには高い技術が求められます。
その技術は、単に経験を積めば誰にでも身につくような簡単なものではなく、個人の適性にも関わってきます。
元々運転が好きな人や、車両感覚をつかむことに自信がある人でなければ、たとえ大型自動車免許を取得できたとしても、事故を起こす危険性が高くなるでしょう。
多くの重量物を積載したダンプトラックで事故を起こすことは、周囲のドライバーへの多大な迷惑や、道路などの公共物の深刻な破損にもつながります。
大型車両を運転できることは、それだけで高い技術の証でもありますが、同時に大きな責任も背負っているのです。
プロのドライバーとして大型車両の運転をするには、運転の技量だけではなく、安全に対する深い理解や、事故を起こさない高い意識が必要です。
過積載には重い罰則がある
ダンプトラックは、過積載に対して厳しい取り締まりを受けています。
過積載をすると車体の転倒などのリスクが高まり、車体の大きさや重量も関係して深刻な事故を引き起こすことになるからです。
また、道路の路面にも甚大な損傷を与える可能性があり、非常に無責任な行為であると言えます。
過積載に対する罰則は、過積載の程度によって決められており、最も重い罰則によれば6ヶ月以下の懲役または10万円以下の罰金が科せられます。
さらに、運送会社や荷主に対しても罰則が適用されることもあるので、過積載は絶対に行わないようにしましょう。
エアブレーキのベタ踏みは厳禁
大型のダンプトラックには、乗用車に装備されている油圧式フットブレーキとは異なり、エアブレーキというものが装備されています。
重量物を運搬する大型車は油圧式フットブレーキでは制御が難しいため、より大きな制動力を持つエアブレーキが装備されているのです。
エアブレーキは大きな制動力を持つ反面、扱い方には注意しなければなりません。
油圧式ブレーキとは仕組みが異なるために、強く踏み込む「ベタ踏み」をすることはブレーキの効きが悪くなるため、大変危険です。
エアブレーキを踏むときは、決して強く踏み込むのではなく、足の裏全体を使ってゆっくり踏み込むようにしましょう。
緑ナンバーを取得しなければならない
ダンプトラックを使用して運送業務を行う場合は、通常の白いナンバープレートとは異なる緑色のナンバープレートが必要です。
他人の所有物を、報酬を受け取って運送業務を行うときには、「貨物自動車運送事業法」という法律によって緑ナンバーを取得しなければならないことが決められているからです。
もし緑ナンバーを取得せずに白ナンバーのままで運送業務を行うと、法律に違反します。
その場合、3年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金という、大変重い罰則が適用されます。
しかも、もし懲役刑になってしまった場合、刑期を終えたとしても5年経過するまでは、新たに緑ナンバーの許可申請を行うことができなくなります。
このように大変厳しい状況に追い込まれるので、ダンプトラックで運送業務をする場合は必ず緑ナンバーを取得しましょう。
ゼッケンを取得しなければならない
大型のダンプトラックは、「土砂等を運搬する大型自動車による交通事故の防止等に関する特別措置法」という法律により、ゼッケンを付けなければならない規則になっています。
ゼッケンとは、国土交通大臣に対して使用許可を申請し、認められたという証明であり、車体の側面に記入されています。
業界用語では「〇建(まるけん)」と呼ばれています。
ゼッケンはダンプトラックに必ず付けなければならない義務がありますが、ゼッケンが付いているからといってナンバープレートが白のままでよいというわけではありません。
ダンプトラックが輸送の業務を行うためには、緑ナンバーとゼッケンの両方が必要なのです。
搬入先の都合に合わせて早起きしなければならない
ダンプトラックのドライバーの多くは、勤務時間自体は他の会社員とそれほど異なるものではなく、概ね8:00~17:00の日中に業務が行われます。
しかしドライバーという職業柄、移動中に交通渋滞に巻き込まれるなどのリスクも考慮しなければなりません。
そのため、ダンプトラックの多くのドライバーはとても早起きで、5:00くらいには出勤するという人も少なくありません。
搬入先の業務を遅らせてしまっては信用に著しく傷がつくので、そのように早くから準備して運送を開始するのです。
ただし会社員としてのドライバーならば、早出をした場合の時間外手当が支給されるので、早起きに対してしっかりと報酬は受けています。
腰痛や胃下垂などの職業病に悩まされることも
ダンプトラックのドライバーは、勤務時間中はほぼずっと運転席に座りっぱなしです。
それはドライバーという職業ならばダンプトラックに限ったことではありませんが、大型車両ならではのデメリットもあります。
ダンプトラックは基本的に板バネをサスペンションとして使用していることもあり、段差による衝撃は直接運転手の体に跳ね返ってきます。
そのため、長時間の運転はドライバーの身体にダメージを与え、腰痛や胃下垂に悩まされるドライバーが少なくありません。
このような職業病があることは、身体が丈夫でしかも自己管理がしっかりできる人でなければ、長年にわたってドライバーを務めることは容易ではないことを示しています。
まとめ
ダンプトラックには多くのメリットがあり、ドライバーの仕事も魅力があることがお分かりいただけたと思います。
デメリットとしては、危険が伴う業務であるために厳しい法規で管理されていることなどがありますが、誠実に業務に取り組めば全く困難なことではありません。
この記事を参考に、ダンプトラックのメリットとデメリットを理解したうえで業務に取り組んでいただければ、充実したドライバーズライフを送ることができるでしょう。